vol.2 田中優2『電力の小売り自由化と家庭のエネルギー消費』オフグリッドトークライブ書き起こし 


株式会社Re様のホームページにて、田中優×オフグリッドの生みの親でありパーソナルエナジー開発・販売をされている粟田さんとの対談イベントでの書き起こしを公開中です。

イベントは2016.2.20に開催されました
https://tanakayu.blogspot.jp/2016/02/off-grid-live2016.html

vol.2 田中優2『電力の小売り自由化と家庭のエネルギー消費

2016年4月から始まった電力の小売り自由化


  そして、今回電力の自由化ということで小売り自由化だけで実現しました。それ以外の自由化で言うと、送電線の自由化とか、「総括原価方式」をやめる、かければかけた分だけ電気料金に上乗せできるというのがあるおかげで、例えば、中部電力ってあのヘナヘナの浜岡原発のところに20何メートルという高さの防波堤を建てましたよね?
 

 あれ、5000億円近くかかったんですが、全部「総括原価方式」で皆さんの電気料金に乗せて良いことになっていますが、それが自由にできる「総括原価方式」が廃止され、そして送電線網が自由化されるのは2020年になりました。先に伸びちゃったんですよ。2020年までは自由になりません。その結果自由化された時に、今回の自由化は小売りの自由化だけ。
 

 小売りの自由化で送電線網は相変わらず電力会社が持っていて、その電力会社がその託送料金というのを、電気を送るための送電線を使った費用をとるんですよ。これが何とkWhあたり9円もとるんですね。そして、電気の方を同じ電力取引所というところから買ってくると、これが約11円/kWhかかるんです。だから11円電気の値段+送電線9円、合計20円/kWhになるんですね。
 

 だから事業を始めようと思って、この託送料金が嫌だから「オレ送電線を張るよ」と言ったら、道路法で許されません。道路に何か設置することができるのは、既存の企業だけですから、電力会社、水道、NTT、ガス、そういったところ以外は張ることすら許されない、という状態ですね。
  そしてこの20円/kWhを払って自由化を進めるということになるわけです。


 ところがこれ高いですね電気の値段。これを避けたいと思うと、大きな発電所から直接自分が電気を買い取ってくるという方法がもう一つあります。取引所を経由せずに直接電気を買ってきちゃうという方法があって、そのどちらかを選ばなければならないという風になるわけです。

託送料金に入れられた原発コスト

 そして、この託送料金って何でこんなに高いの?と見てみると、これは送電線の送電費用なんですが、送電費用の中に原子力のコストを入れられてしまっています。電源開発促進税、これ原発を進めるための税金ですね。
 

 それと核燃料再処理費用、六ケ所村の再処理工場でやる費用、これがですね、何と合計で9.3円も託送料金の中に入れられてしまっている。送電線のコストに、何で発電のコストを入れるんだよ、ということをちゃっかりやっちゃっています(その後に福島原発の処理費用も入れられた)。
 そのおかげで日本では残念ながら自由化されても元々の電気の値段が高いので安くできないという仕組みになっているんですね。
 

 しかも例えば東京電力のデータで見ていくと、電気の値段って節電している人は使えば使うほど料金が高くなる側なんですね。逆に、電気をすごく消費している人は使えば使うほど安くなる側になる。家庭は電気を使っていくと、月に192kWhを超えると、19.42円が25.91円になる。そして300kWhを超えると29.93円になる。これは節電をした方が経済的に得になるような仕組みが作ってあるんです。
 

 新たな「新電力会社」はここの仕組みの中に参入していくんですよ。そうすると20円で買ってきた電気でこの省エネをしている世帯のところに電気を送れますか?20円で買ってきて19.42円で売ったらどうなります?大赤字ですよね?
 

 だから、小さなところに対しては残念ながら電気を送りたくない、という状況になります。それをグラフに描いてみました。節電している世帯って、ぼくらみたいなところには多いんです。すごく電気の消費量が少ない方が結構多いんですね。


 そういう人に相談をされて、うちはどこを選んだら良いの?って調べてみたんです。そうすると何と、51kWhあたりよりも電気消費がひと月少ない方、1日2kWhもいかない場合だと、ガスを東京ガスに契約をしている人だったら、東京電力を辞めて東京ガスから電気を買うようにすると、割引率が大きくなって、ですから消費の少ない方には東京ガスが得になる。

 消費がそれを超えると東燃ゼネラルが安くなるんですが、この東燃ゼネラルというのは石油会社の集まりです。そこが自分で発電所を持っているんです。要は。


 その持っている発電所があるから、だから安くできますよ、ということでこういうのを選ばない限りは得にはならない、という構図になります。
 


国家に頼むのもうやめたらどう?現実にCO2を出さない暮らししちゃおうよ

 じゃあどうしたら良いのかと考えると、国家に頼むのをもうやめたらどう?って思うんですね。国家とかに頼んで何とか解決してもらえるって思いこむのは、もうやめたらどう?それよりも現実に二酸化炭素を出さない暮らししちゃおうよ、それによって現実に我々解決できているんだけど、何であなた解決できないの?という風に言っていくことの方が大事じゃないかという風に思うんですね。

 そして日本の中の二酸化炭素の排出についてよく言われるのは、皆さんのライフスタイルの問題だ、皆さんが努力すれば解決します、というような言い方ばかりされていますが、国内の中で家庭が出している二酸化炭素は5%だけ。
 
 そして間接的に出しているものがあります。我々が電気を使うんだけども、発電所で出している分がある。その間接排出量を含めても16%しかないんですよ。

 だから我々がそれこそ爪に火を灯すような暮らしをして、CO2をゼロにしようと努力したとしても、16%減るだけ。全然解決しないですね。

 じゃあその二酸化炭素は一体どこのどいつが出しているんだということが気にかかるわけですが、ここのこいつです。

結局、自由化でトクをするのは浪費家...


  じゃあ全体ではどうなるの?ということで調べてみると、何と得になるのはこの辺の人たちですね。ここで見ると例えばひと月に2~3000円ほど安くなるんですが、これがどれくらいの消費量かと言うと、ひと月に7~800kWh消費する方なんですよ。これは、相当消費をする方です。
 

 日本の中で、平均の家庭で360kWhくらいだと言われていて、ところが東京電力はこれまで家庭の消費の平均値は290kWhだと言っていたんですね。


 何で東京電力は290kWhと言っていたかというと、300kWhを超えると値段が高くなってしまうので、平均世帯の電気料金が高く見えてしまうじゃないですか。だから300kWhを下回るところにわざわざ東京電力は設定して、「だから高くないよ電気は」と言うためにやっていただけ。
 

 どちらにしても実際のところはよくわかっていないという状況なんですね。そういう中で結構好き勝手な数字を出して、今「全国平均が364kWhだよ」と言ってみたりですね、日々刻々と適当な数字が出るという状況になっています。この結果、どういうことが起こるかと言うと、得をするのは圧倒的に電気の浪費家です。だから電気を浪費しないと、自由化で得はできません。


 そうなると家の中でせっかくCO2排出量が少ない、例えばストーブを使っていたという方が、オール電化に変えちゃった方が得だなとかなっちゃうんですよ。だからこの自由化は、電気を浪費 させるための自由化になっちゃっています。

 今回の自由化に期待するのは恐らく間違いですね。残念ながら得する方は電気の浪費家だけで電気の浪費を促進する形の自由化にしかなっていない、というのが実態だと思います。
 

 そして2020年まで託送、送電線は自由化されない、そしてこの後どんなことが予定されているかと言うと、色々調べていくと変な話がいっぱい出てきまして、この託送料金の中に廃炉費用を入れちゃおうよ、いやそれ原発のお金じゃないですか、発電の費用でしょ。
 

 ところがそれも入れちゃおうよというような話になっていて、これが送電線の自由化は2020年ですから、今年2016年に自由化されて生協さんとか色んなところで良い電気を届けるようにしたいなんてことでやっているわけですが、恐らく20円でそれを仕入れてきて、25円以下で売らなくちゃあ電力会社に勝てない、となってくると恐らくつぶれますね。4年もたないですよ。4年経たずしてそれらがつぶれて、その後にはまた、従来通りのものすごくデカイ企業が市場を支配するという構図に戻ってしまうんじゃないかとみています。

それでも日本の家庭の電力消費は小さい

 そして一方で家庭の中のエネルギー消費なんですが、世界中の国の家庭のエネルギー消費を見て行ってみると、何と一番エネルギーを浪費をせずに使っている国はどこの世帯でしょうか?
 
 日本なんですよ圧倒的に。我々が実は世界の模範のような暮らしをしています。


 この中の緑の部分が電気、真ん中の黄色い部分はお湯、左側のピンクの部分は暖房です。それを非常に効率良くやれている模範が我々日本の家庭だったんです。にも関わらずいつも言われるのは、「ライフスタイルの問題で皆さんが浪費をするから」と言われてきたわけですね。大きな間違いです。我々こそが模範的な暮らしをしています。


 そしてその中で家庭からのCO2はどこから出てくるのと見てみると、実に50.8%が電気なんですよ。だから地球温暖化に対応するのであれば、電気から二酸化炭素を出さないこと、とにかく節電が一番重要なんです。それ以外のことはやってもほとんど意味がありません。その次に大きいのが車ですから、電気と車、これが家庭内のCO2の4分の3を占めているという構図です。
 

 そしてその電気なんですが、何に使っているのかと調べてみると、ここにデカイ3つあるのが「IH・エコキュート、電気温水器」というのは要はオール電化ですね。
 

エネルギー効率的にも最悪なオール電化

 エネルギー的にオール電化は最低なので、オール電化は辞めてもらうとあとの残りがこれなんですよ。この残った部分で圧倒的に大きい方から順に、「冷蔵庫、照明、テレビ、エアコン」その次が「パソコン関係、AVオーディオヴィジュアルとIT関係」、その次が「暖房便座」。
 
 だいたいここで半分以上の消費をするわけです。だったらどうしたら良いの?
 

 ぼく努力忍耐をするのを辞めてもらった方がよいと思います。なぜなら努力忍耐に頼った世帯は、1年後には元に必ず戻りますから。だから努力忍耐をしない方がいいと思う。じゃあすべきことはと言うと、省エネ製品を上手く利用していくことなんです。
 

 これ、1995年製品を100として、どこまで省エネが進んだかをグラフにしました。

 今見た中で一番電気消費が多かったのは「冷蔵庫」でしたね。冷蔵庫は何とこの間に、マイナス97%。ですからかつての3%しか電気を食わなくなりました。


 だからかつての電気を確保するならば、今の冷蔵庫を33台並べることができます。そこまで省エネをしたので、冷蔵庫についてはもし古いのをお持ちだったら今すぐ買い替えた方が良いです。

 なぜなら年間に3万円電気料金が安くなりますから。だいたい3年で元がとれちゃうという構図になるからです。それ以外の機械は、買い替えるタイミングになったらとにかく省エネ製品を選ぶということをやって欲しい。


 そして先ほど「オール電化をやめた方が良い」と簡単に言いましたが、何でかと言うと、熱を電気で作るとどうしても効率が悪い。何で効率が悪いかと言うと、その発電の時点で6割の熱を捨てて40%だけが電気になっているので、だからそれを熱に戻すんだったら最初から火を使えばということなんですね。


 そして、その省エネ製品を使ってなおかつ熱を電気で作らない、その2つをやった場合どれくらい電気消費が減るかと言うと、3分の1以下です。だから今の電気消費を減らす方が全然簡単なんですよ。それは何と3分の1以下に減らすことができて、その費用の合計がどれくらいになるかなと計算してみました。
 

 50万円かからないんですよ。家の中の冷蔵庫を買い替えて、エアコンを買い替えてテレビを買い替えて照明を買い替えて・・という風にやっていっても、何と50万円かからないくらいでできてしまうんです。そっちをやって、その後に今度オフグリッドをしていくというやり方をしていった方が効率的ですね。

▼トークライブ書き起こし目次 

▼vol.1 田中優①『電力の未来はオフグリッドしかないかも』

▼vol.2 田中優2 『電力の小売り自由化と家庭のエネルギー消費』

▼vol.3 田中優3『自然エネルギーにも使い方があるんだ』

▼vol.4 粟田隆央1『パーソナルエナジー誕生秘話』

▼vol.5 粟田隆央②『震災、原発事故、橋の下世界音楽祭』

▼vol.6 粟田隆央③『すべてのエネルギー消費者が、エネルギー生産者になる』

▼vol.7 粟田隆央④『オフグリッドを切り拓いてきたからこそわかる事』

▼vol.8 田中優×粟田隆央 トークセッション①

▼vol.9 田中優×粟田隆央 トークセッション②

▼vol.10 Q&A①

▼vol.11 Q&A②

▼vol.12 Q&A③