電気代に苦しむより自分で対処しよう

岡山県のパン屋さん「オプスと」に入っている井戸水輻射冷房


 電気料金が値上がりを続けている。円安に加えてウクライナ紛争からの石油ガスの供給不安、梅雨がなかった上に異常高温による電気のひっ迫が加わって、暑くてもエアコンをかけにくい状態が続いている。でも熱中症対策としてエアコンをつけるようにと言われる。しかし電気料金の値上がりが続いていて、電気料で干上がりそうだ。この値上がりはいつ収まるのだろう。

そこで必要なものは自分で賄ってしまうような仕組みが望まれる。太陽光発電でカネが儲かるような時代は終わった。しかし電気料金に上乗せされる固定買取のFIT料金だけはまだまだ続いている。まるで八方塞がりの状態の中で、生活固定費の値上がりに苦しめられている。

 

 しかし電気を完全に自給するのは難しい。電気の九割を自給できたとして、雨が続いても残りの一割を自給するとなると、電気を貯めておくバッテリーに費用がかさむからだ。発電はできても、貯めておくのは難しいからだ。

 我が家は完全オフグリッドしているが、それにはどうしても余分な発電とバッテリーが必要になる。逆に天気が続くと電気は温泉のかけ流しのような状態になり、雨が続いた時以外は必要ないのにも余分なバッテリー量を用意しなければならない。そんな時には曇天でも発電するタイプの太陽パネルを用意するか、値段の高いバッテリーに頼るしかない。他の方法を考えるとしたら、電力会社の送電線につないだままで、万が一の時にだけ電力会社を利用するしかない。

 

 でも幸いなことに、毎月少量の電気を買うだけなら(毎日4kwh以内の電気なら)、電気料金を極めて安くすることができる。万が一の時と、電気の足りない時だけ電気を買うなら、送電性につないだままでも安く暮らすこともできる。

 岡山の友人たちが「エネルギー自給」のための「自エネ組」を作っている。そこで今進めているのが、電気自動車リーフの中古バッテリーを使った仕組みだ。

田中優宅に入れたリーフの中古バッテリー

電気自動車として使うためには急激な電気の消費や厳しい状態までの電気利用が必要になるが、家庭で使う電気ならバッテリーの中庸の部分だけで利用することができる。リチウムイオンバッテリーは、底まで利用せず、急な消費を避けて満充電にしないように使うならば、長く使うことができるのだ。

 

 フリーライターの友人が取材しに来て、我が家の仕組みを改めて計算してみたら、中古リーフのバッテリーと太陽光パネルを設置した場合、ほんの数年分の電気料金を充てたならば、その仕組みの費用も支払えることがわかった。

 電気料金と比較して話すと、貪欲な気持ちが芽生えて話にならないが、この先の見えない急激な値上がりのおかげで、少なくとも話はできる状態になった。しかもリーフのバッテリーは他国では考えられないほどの安全性が確保されている。あるメーカーが、中古バッテリーを活用した「ポータブル電源」を開発しているほどだ。家庭なら急発進もないし、無理なところまで電気を消費したりしない。

 

 それに太陽光パネルを加えても100万円以内で買えるとなれば、毎月のあなたの電気料金の何か月分で賄えるだろう。それが新たな電力確保の方法になる。今の金利は安いから、安い金利で借りられてつけることもできる。

 
 もう一つ大事なのは節電・省エネだ。熱に電気を使わないことと、消費の大きな家電は省エネ製品に買い変えれば、それだけパネルもバッテリーも少なくて済む。我が家はそれらを選んだおかげで、暑いときは毎日エアコンをかけ、全自動の洗濯乾燥機も給湯装置も使えている。ちっとも努力忍耐ではない快適生活が実現できているのだ。

 

 先日、妻が子どもの授業参観に行ったら、最新鋭のヒートポンプエアコンで冷房しながら、感染症対策で窓を開け放っていたそうだ。ヒートポンプは室内の熱を集めて外気に捨てている。それなのに、熱を捨てた外気を再び取り入れて冷房している。まさに穴の開いたバケツに水を貯めるようなものだ。そうではない方法で解決すればいい。

 「自エネ組」では冷たい井戸水をラジエターのようになった装置を壁に取り付けて冷房している。

これは井戸水の冷気の「輻射熱」を利用するもので、音もなく冷たい輻射熱によって涼しくしている。それは京都の南禅寺の修行場にも入っていて、冷たい井戸水が発する冷熱が風もなしに周囲に涼しくしている。

冷たいので結露するが、そこに雨樋をつけて最後は屋根に流している。それが気化熱を奪って屋根を涼しくする。この空気中の水蒸気を結露させて湿気も取るので、除湿効果でさらに快適になる。それなら電気は水ポンプの電気消費(エアコンの一割ほど)で部屋中を涼しくできる。もし学校の壁面を利用して設置したら、はるかに省エネで快適な冷暖房も可能だ。

 もともと冷暖房を空気の対流で得ようとすること自体、効果が低すぎるのだ。熱には空気の対流か、電磁波による「輻射」か、熱伝導を利用するしかないが、空気の対流で熱を届けるのは効率が悪い。それぞれの温度が発する「電磁波」を、輻射熱として乱反射させて伝えた方が、はるかに効率が高い。そのようにして冷暖房するならば、エアコンよりはるかに効果的に冷暖房できる。

 今回の電気料金の高騰を災難として受け容れるのではなく、新たな仕組みに変えていく好機にできればいい。

電気は全国をつないだ送電線で得るのではなく、小さく各地で作り出した電気で賄いたい。

送電線網では、動いてもいない巨大発電所の電気を確保するために使われていなくても他には利用させない。だから各地で自然エネルギーの電気があるのに利用されないのだ。調べれば調べるほど役立たない従来の仕組みが立ち塞がっている。


 変えよう、未来の仕組みを。
 使えない発電にFIT料金を取られるのはおかしいし、電気が足りないからとさらに温暖化を進める化石燃料の発電所を動かすのもおかしい。

 悪循環を繰り返すのではなく別な方向を進めるとしたら、政府や電力会社ではなく市民自身が次の仕組みへと歩を進めていくべきだ。市民自身が新たな一歩を踏み出す時だと思う。手をこまねいているのではなく、調べて考えて解決策を探してほしい。

(2022年7月川崎市職員労働組合様へ寄稿したものを、好意を得て転載しています)    

井戸水輻射冷房の参考動画

2022.8.30は岡山市にてこの井戸水輻射冷房の特別体験会があります。どなたでもご参加大歓迎です。お気軽にどうぞ。↓