妻がyoutubeを見ていて、「何を心配しているのか、おかしい」と不思議に感じている。何の話かというと、ウイルスを恐れて除菌や殺菌スプレーをしまくったりしているのを見て、そのせいで具合が悪くなったり環境を悪くしたりする可能性に憤慨しているのだ。
我が家の洗濯機は自動で洗剤量を指定してくれるが、その洗剤の種類の中に「液体せっけん」がない。合成洗剤ばかりだ。これでは下水の分解を妨げてしまう。一事が万事この調子では、良かれと思って環境を悪化させてしまうではないか。
これにぼくも同意する。除菌や殺菌を子どものためと思い込んでいるのだろうが、それが子どもの未来を絶望的なものへと変えている事態が多い。
そう言えば福島原発事故後の甲状腺がん被害者の人たちが、東電と国を相手取って訴訟せざるを得なくなった。それを保守政治家や政府は「風評被害を強める」と批判している。しかし小児甲状腺がんの発生の確率は、年間あたり100万人に一人か二人程度だ。
ところが2021年7月時点で、福島県では原発事故以降に285人もが発症した。福島県には何百万人の小児がいたというのか。算数すらできない人たちが、政府中枢にはずらりと並んでいるようだ。
ドミノ倒しを防ぎたいのに
そしてもう一つ、地球温暖化問題に対する危機感の乏しさが私たちの未来を絶望的なものにしている。地球温暖化で国土の平野部が沈んで機能を維持できなくなるのは数百年先だろうが、では温暖化問題のドミノ倒しが始まるのはいつだろうか。
今、極地に浮いている海氷は、太陽光を反射して宇宙に還している。その氷が溶けると、直接暗い色の海水に太陽光が当たって熱が吸収される。その温まった海水は海氷をさらに溶かすだろう。これを「ポジティブフィードバック」という。悪いことがさらに悪いことを引き起こして止められなくなる。つまり「ドミノ倒し」が起こるのだ。
そうなるともう止められなくなる。温暖化はもう嫌だと思っても、雪だるま式に崩れ落ちる災害を止めることはできない。その「ポジティブフィードバック」はいつ始まってしまうだろうか、この時点を「ティッピングポイント」という。「後戻りのできない時点」だ。それがあと数年で訪れるという。こっちの方が、ぼくにはとても大きな危機だと思う。
でもなぜだか多くの人は「消毒薬」ばかり気にしている。
「大きい小さい」がわからないのだと思う。
ぼくはとてつもなく大きな危機だと思うのだが。でも心配なのはこの「大きい小さい」がわからない人たちに囲まれ、その人たちの多数決で未来が決められてしまうことだ。「大きな問題」の前に「小さな問題」にばかり忙殺されそうだ。子どもの今のために努力して、未来は潰すというのだろうか。
ぼくは「蟷螂之斧(とうろうのおの)※」と言われても解決したいと思う。しかし本当の時間がない。止められるまでの時間があまりにもないのだ。よく聞く言い方だが「政府も企業も頑張っている」と聞かされても現実は結果責任だ。何と言おうが、間に合わなければ滅亡なのだ。
解決策
そこでぼくは人々へ生活への解決策を述べたい。人々が解決できる分の話だ。そして自分の責任を果たした人たちは企業と政府を問題にしよう。もともと企業の責任の方がはるかに大きいのだ。
その手段は一番の温暖化原因となっている二酸化炭素、人々の生活に関わる部分で一番大きいのが「電気消費」、次が「給湯や暖房のガス消費」だ。そのどちらも自然エネルギーで自給できてしまう仕組みができた。
それが「慧通信技術工業」の作った「エコワンソーラー」であり「おひさまエコキュート」だ。
どちらも電気自給と給湯の熱エネルギーを自前で届けてしまう仕組みだ。
と言ってもこれまでの「エコキュート」とは全く違う。深夜電力を使うのではなく、昼間の暖かい水を昼間の暖かい外気の熱を利用して温めるから断然効率が良いのだ。うまくすれば電気もガスも全く外から受ける必要がない。使い過ぎに備えて、電気とガスはつないでおきながら最低料金だけ負担しておけばいい。しかし万が一の時にはその装置でカバーできるのだ。
それに私が30年前に設立した「未来バンク」を利用したい。すると毎月29,000円の返済を10年間続けるだけで返済できる。うち15,000円程度は、電気代・ガス代の安くなる分を返済に充てることができるし、その後の負担は少なくなる。将来的に電気自動車利用を想定するなら、「おひさまエコキュート」なら電気自動車のバッテリーを充電に利用できる。
利用すると家庭の大きな二酸化炭素排出源だった電気とガスを削減できる。このことの方が「殺菌消毒」よりも重要だと思うのだが、どうだろうか。
私たちの考え方で一番問題なのは、目の前の除菌のせいで未来のことを見なくなっていることではないか。
「地球温暖化による大量絶滅」を考えると、まるで
目の前のハエに気を取られて毒蛇を踏んでしまう
ようなものだ。
大きな問題に気が付かないことに問題がある。もっと目を見開けば、叶うかもしれない永続的な未来があって、そのためのルートもある。
二酸化炭素の排出源は第一に発電所と企業の化石燃料消費、第二に運輸の燃料だ。ならば大きな問題から順に対策するのが得策だ。「大きな問題」と「小さな問題」をごっちゃにしてはいけない。
解決しなければならない問題は「大きな問題」
の方なのだ。
でも私たちが日々耳にしているのはその「小さな問題」の方ばかりだ。そのせいか人々は口を開けば「コロナがどうの」とばかり口にしている。ところがその間にウイルスの方が弱毒化したようで、「風邪」との違いがほとんどわからなくなってしまっている。
確かにウイルスも問題だが、それより間もなく訪れる地球温暖化による大量絶滅の方が深刻だと思う。個人的な話だが、今年ついに年金が満額得られる歳になった。人生で言うと最終コーナーを回った感じだ。ならばその人生に何を残せるか、何を残すかと考えざるを得なくなる。そんな時に「消毒・殺菌」どころではない。
人が生きたことの価値にとって、未来をどう残せるかが勝負なのだ。
カネがあったとしても未来がなかったら、引き継ぐどころではない。
ワクワクできる未来のある環境こそを、子どもたちに残したいと思う。
(2022年2月川崎市職員労働組合様へ寄稿したものを、好意を得て転載しています)
※螳螂之斧《カマキリが前あしを上げて、大きな車の進行を止めようとする意から》弱小のものが、自分の力量もわきまえず、強敵に向かうことのたとえ。