住宅は物を置く場所ではない ~「物置」の活用を~

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広ければ広いほどいい?

我が家は岡山の田舎に建てたせいで、敷地に余裕がある。160坪の土地に21坪ほどの建物が乗っているだけだ。だから建て替える前からあった物置は、取り壊さずにそのまま使っている。

建てる前の敷地の様子。広い敷地に小さい家を建てた。

さらに室内の屋根と天井の間は背の低いロフトにしたから、そこにも荷物が置ける。それでも家内からは「もっと広ければ良かったのに」と言われる。

限りないのは「欲望」ばかりじゃなくて、「スペース」もそうなのかもしれない。でも家具の話で書いたように、一部屋のスペースをベッドだけに取られてしまうのは解せない。家具が人間よりメインになるのはおかしいからだ。

 

室内は断熱してさらに冷暖房する。それは心地よい空間を作るためだ。だけどその冷暖房した空間のほとんどを家具や雑貨が占めるとしたら、これもおかしい。たかが家具や家財にまで冷暖房はいらない。

ヒートショック

しかし「ヒートショック(温度の差によって血圧が動いていろいろな病気につながる)」が盛んに言われるようになって、どの部屋も同じ温度を保とうとするようになった。もともと日本は個別の部屋だけ適温にし、全館暖房のようなことはしなかった。「ヒートショック」の心配によって、冷えやすい風呂に暖房器具を入れたりする。

 

しかしヒートショックを気にすべきなのは、ただの室温ではない。「温度差」なのだ。その温度差は10度以上だと問題が出るという。となると室内温度が20度いかない程度にしている我が家は、寒い場所でも10度あればいいことになる。20度程度にするのは、冬になると体が勝手に調整して、その温度でも十分寒くなく感じるからだ。

 

すると-10度すると、風呂場は10度いかない程度までならいいことになる。ところが実際には、外が氷点下の日にも暖房を入れる前の朝でも室内は10度弱ある。家が狭いせいもあって、部屋を暖房すると風呂場も少しずつ温まるから、それほどの温度差にはならない。

冷暖房は居住空間に

そう、家の中で10度もの温度差ができる場所などないのだ。するととにかく大切なのは、せっかくの断熱と冷暖房の部屋の中に、余分に冷暖房させるものを置かないことだ。実際にはタンス、机、のような木材製品は、温度を上げ下げしないほうがいい。ということは空気以外のものを必要のないときに温めない方がいいのだ。

 

冷暖房すべきものは人のいる空間であって家具・家財ではない。
そして温度差は10度以内にすれば事足りる。


 
それ以外の品は、頑丈な物置を建ててそこにしまってしまった方がいい。

居住空間は人がいる空間だけでいいのだ。物はなるべく冷暖房のない空間に出してしまう方がいい。

 

2018年8月発行の天然住宅田中優コラム「持続可能な社会を目指して」より転載しました。

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