天然住宅コラムでもウクライナ紛争について書きました。
ここでも強く言っていますが、ぼくは武力侵攻を正当化しているのではなく、また世界中の戦争や人権侵害などに対して断固反対する意思はこれまでも、そしてこれからも変わりません。
ウクライナ紛争のもう一つの視点
あえて敏感な領域について、話をしたいと思う。これは、武力による侵攻を正当化するものでは決してない。またロシア政府やウクライナ政府というときに、ロシア人、ウクライナ人とは分けて考えてもらいたいと思う。また、戦争や、命や人の尊厳を失わせることを拒絶することを同時にここに記したい。あくまで一つの視点として捉えてもらいたいし、それでも表現する必要はあると思うのは、無関心でいるよりもまだましと思うからだ。自分と無関係なこととして目を背けないように、私は私の知見を書きたいと思う。
二月の終わり、ロシアがウクライナの州の独立を認めて住民の保護を打ち出したことから紛争が始まった。ウクライナの領土を勝手に支配したからだ。そしてわずか半日の間にウクライナに置かれていたNATO軍の軍事施設を攻撃したことから紛争となった。ここだけを見るならロシアの一方的な軍事侵略のように見えるし、日本を含む西側諸国のメディアにはそう報じられた。
しかしそれまでの経過を調べると、一方的にロシアを悪者にするには疑問が残る。ウクライナはロシアを離れてからずっとNATO軍寄りの政策を取っていた。NATO軍はロシア側に近づかないという約束をしておきながら、それをずっと無視してきた。さらにロシア崩壊後のウクライナ内の政府施設を民営化の名の下に「オリガルヒ」と呼ばれる新たな民間企業に売り払い、実質「公的施設」だったものをギャングのような「オリガルヒ」とそれを支えるアメリカ系ファンドに売り払い、その利益を私益にしてきた。
そして2014年には親ロ派の抗議行動を利用して「ドンパス戦争」として激化させ、一万人以上のロシア系住民に被害者を出した。(この年、バイデン大統領の息子「ハンターバイデン」がウクライナ最大手の天然ガス会社プリスマ・ホールディングスの取締役就任している)
そもそも民主化運動のように見せかけながら、ロシア不在を利用したオリガルヒの略奪に近い活動だ。それをロシア崩壊後のウクライナが利用し、NATO軍に加盟しようとしながらNATO軍の軍事施設を入れていった。これはNATO軍の進出を恐れるロシアにとっては協定違反であり、ロシアを軍事施設で囲むことは許しがたい暴挙だった。そしてドンパス戦争後も続く住民虐殺を止めることを理由として、ロシア軍が侵攻した。ロシアの攻撃はほぼ半日で終わり、破壊したのはウクライナにあるNATOの関係施設が主だった。
ぼくはかつてピースボートのスタッフから現地の事情を聞いていた。その中で船を所有するのはウクライナ船籍が多いことから、その交渉の話も聞いていた。ロシア崩壊後の混乱は酷かった。前に船を借りたところに連絡を取ってみてもつながらない。以前の船長はロシア崩壊後に自分が船主だとして勝手に名乗り、力がなければ殺され、次に最も力の強いギャングのものになるまで略奪合戦が続いた。旧ソ連が崩壊して、社会主義国だったソ連の所有物は突然「誰のものでもない無主物」になった。それを奪うためにギャングたちが抗争し、そこに西欧のファンドたちがカネを出して応援し、利益を得た。これがジョージソロスのようなファンドにとって効率良い投資だったのだ。これがエリツィン大統領の言う民営化だった。
それを防いだのがプーチンだった。次々と脱税・横領として逮捕し、不当な利権をはく奪していった。それがプーチンの粛清であり、正常化だった。
人々は「自由だが治安が悪い状態」と「治安は良いが不自由な体制」の二つの狭間で悩み、人々の多数派は「不自由だが治安は良い」プーチン体制を選んでいった。
「オリガルヒ」を調べて見てほしい。するとウクライナが単なる被害者ではないこともわかるはずだ。その際にジョージソロスのしていたことを知ると、どこに利益の源があったのかを知ることができる。
今の世界は敢えて言えば、
オリガルヒの頼りにするNATO軍、すなわちアメリカの支持する西側社会
と、
人々が自治する社会
とが対立する構図になっている。
それは従来「冷戦」の意味する東西対立ではなくて、さらに発展したファンド型のマネー社会と、カネではない価値軸に結集しようとする社会との対立に見える。それが今、NATO軍に入ろうとしているオリガルヒに支配されたウクライナと、それを止めようとしているプーチンとの対立ではないか。
世界の戦争は国と国の戦いなどではなく、一部の大金持ちたちと手下に成り下がった国と政治家たちによる略奪なのだ。これが現在の世界の構造なのだと思う。この被害を受けるのは一般の人たちだ。私たちはこの流れに抗えないのだろうか?
2022年2月発行の天然住宅田中優コラム「持続可能な社会を目指して」より転載しました。
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