電気自動車は日本にどうなの

不穏な新年

年が明けて「明けましておめでとう」と言うところだが、今年は年明けから不穏な空気が流れている。子どもが生まれてから、新年と夏休みは妻が子どもを連れて里帰りするのでぼくは一人だけ岡山に残される。その子どもからのメールで地震のことを知らされる。岡山はほとんど揺れなかったが妻子のいる新潟ではかなり揺れたそうだ。聞くと「テレビを点けてみて」と言われる。つけると能登半島の様子が映し出される。まさに寒村の中で人々が困っている様子が見える。しばらく見ているとインフラが機能しなくなっていて、まだまだ全貌が分からないことがわかる。

岡山から妻の実家までのルートは北陸道を使って車で行く。ルートの途中には福井や金沢、新潟など今回の被災地がある。妻の実家も結構揺れたようだ。小学生の娘は倒れそうなテレビを押さえてすぐコタツの中に隠れたそうだ。震度5強もあって、体感では長く続いた感じだったらしい。ところが岡山のぼくは揺れたことにも気づかなかった。岡山の我が家は8000万年前に噴火した火山の跡地で、堅い岩盤の上にあって活断層はない。

能登地震の報道を見ていてとにかく生活インフラの安全性、確実性が大事だと痛感する。もしも我が家に起こったらと考えてみる。我が家は太陽光発電と自宅用バッテリーがあるから数日の電気は大丈夫、水は井戸だしポンプも自給した電気だからそれも晴れ続けていたら大丈夫、ガスはプロパンだから数日は大丈夫、通信もほぼ全部が光通信だから大丈夫そう。

問題なのは雨がずっと続いた時だから、その時の電気のためにトヨタ車のハイブリット車に装備している緊急時の自給システムを備えようと思う。

我が家は電力会社の送電線につながっていないから、回復するのも自己責任なのだ。でもその代わり電力会社の悪事に加担していない。送電費用にすら原発費用が含まれているのだからそうしなければ縁が切れない。ありがたいのは自給すると毎月の光熱費がなくなって生活インフラの心配がなくなり、選択肢をわが手に凝り戻せることだ。

もう一つ、欠かせない交通手段のために電気自動車の選択も考えていた。幸い太陽光発電はしているのだから、増設して自らの手で作れなくもない。しかし調べてみると恐ろしい現実があった。

それは予想外の電気消費だった。

普段クルマに乗る時に暖房などエンジンの余熱ぐらいにしか考えないが、電気自動車では違う。電気を使う時が一番「電費(燃費は燃料に対して電気消費の走行に対する比率)」が悪化するのだ。なぜなら電気の消費は熱を利用する時が最も効率が下がるからだ。

そしてクルマが走ることより熱として消費する場合の方が効率が悪いからだ。特に熱は温める範囲に比例して大きく消費するので、車内温度を上げるよりはシートだけを温める方がずっと温める範囲が狭いから効率が良くなるが、後部シートを温めることにならないし、後部座席の人を温めたいと思えば車内全体を暖めるしかない。そのためどうしても車内全体を暖めてしまう。その時も同じようにしたくても後部座席にヒーターはなく、車内暖房を使ってしまう。

https://loveandtruckbus.com/nextheating/

その場合にも「ヒートポンプ」を使えばまだましになるが、即座の対応にはならないので車内全体を暖房してしまいかねない。「電費」で考えればそうなるが、後部座席から「寒い」と言われた時に、咄嗟に思いつかないかもしれない。今までのエンジン車の癖があるからだ。温める広さに比例するという考えも、エンジンではなく電気で直接温めているということに思い至らないからだ。

こうして寒さに電気自動車は不向きだ。増してや太陽光の電気を使っていた場合、冬場の日本海側は日照が少なく、それだけ発電しないことになる。太平洋側と比べて日本海側の冬季は不利になるのだ。

さらに電気はバッテリーを暖かく維持するためにも使われる温度が下がるとバッテリーからの電気を取り出しにくく、貯める能力も下がるためだ。バッテリーは適温があり、温めていないと能力を維持できないためだ。ハイブリッド車でなければエンジンでシャフトを動かすこともできずに発電機一つ動かすこともできない。この結果、渋滞にはまることも恐怖なのだ。

こう考えれば、電気自動車で岡山から裏日本を通る北陸自動車道を利用することのリスクがわかるだろう。まして北陸自動車道では冬場に積雪の影響で渋滞する危険性もある。日本海側は電気自動車に対してはリスクがあるのだ。だから妻の実家のある新潟に向かう時には電気自動車は使えない。そう考えて電気自動車は選択肢に入れられなかった。そのことの正しさを今回の能登震災の事態は明らかにしてしまった。自動車道は渋滞し、雪道で温度も低かった。こんな場所に電気自動車で行くのは自殺行為になってしまう。

雪道の北陸自動車道

まとめていうなら、冬場の晴天が少なく、積雪があって気温が低くなる「日本の日本海側」には電気自動車の利用は困難なのだ。これが現実だ。この現実を打破するには、バッテリーの構造を変えて、軽く、長く使えて寒さに強いバッテリーを開発しなければならない。それはそんな簡単なことではなく、数十年の年月が掛かるだろう。さらに言うと、今の最善のリチウムイオンバッテリーは分解しても再利用が難しい。なぜならリチウムという素材自体が安すぎて再生されないためだ。昔からの鉛バッテリーの鉛の方が価格がつくおかげでリサイクル可能となっている。その分だけマシになっているのだ。

電気は凍結するわけではないが、寒冷地域などで-25℃以下になった場合、バッテリー内部の電解液が凍結する場合がある。

https://mcc-ams.com/article/05/ EVバッテリ―構成およびLiBセル内の構造イメージ

凍結した場合、電槽のひび割れや液漏れなどの症状がでる場合もある。 特に車両を長期間使用しないなどでバッテリーが放電した場合は、-10℃前後でも凍結のおそれがある。逆に暖かくても事故時には、天気が水素を誘発して火災を起こすことがある。するとアメリカでそうしているように、消えるまでその場に放置して燃え尽きるのを待つことになりかねない。安全性を考えると、日本に導入するには時期尚早と言わざるを得ない。残念ながら補助金に釣られて入れるとしたら後悔することになりそうだ。

だから電気自動車の推進には反対せざるを得ない。一年中暖かくて渋滞のない沖縄のような場所で、自宅の屋根の太陽光発電で発電した電気を利用しない限り、地球温暖化の対策にすらならない

資源からエネルギーを取り出すには、経由する過程を複雑にすればするだけエネルギーを消費する。

国立環境研究所

原油から電気にする過程の分だけ効率は悪化する。電気自動車はガソリンを使って電気を使うより、直接燃やして走行させるより効率が良くなるとは限らない。まだ数段階の改革が必要なのだ。

「燃やす時に二酸化炭素を排出しない」などと詭弁でウランの採掘時を無視したり、ウラン濃縮時の遠心分離で膨大な電気を消費し、膨大なウラン残渣の年代を隠蔽したりする政府や業界のある日本の言うことなど信頼に値しないのだ。そこが推進する電気自動車など、信頼するに値しないと考えるべきだろう。

この結果、我が家では電気自動車を導入しなかった。そして今里帰りから無事に戻った妻子を見ながらホッとしているのだ。そして今、稀に不足しかねない電力自給のために、トヨタのハイブリッド車導入の算段をしているところだ。

万が一の時のためには、電気を作れるハイブリッド車を利用しよう。それと同時にクルマの燃費のためにもハイブリッド車にしよう。我が家の二酸化炭素の排出は一般家庭の半分程度まで下げていて地球温暖化を起こさない程度まで下げている。その大部分は電気自給をしているおかげだ。さらに電気自動車を導入することは上記の理由で辞めた。今回のそれは震災の被害を見るにつけその思いを強くしている。

今のところ、この生活が正解であると思う。

最後になりますが、この度の能登半島地震の震災により被災された皆様へ心よりお見舞い申し上げます。 一日も早い復興をお祈り申し上げます。

(2024年1月川崎市職員労働組合様へ寄稿したものを、好意を得て転載しています)