先日は「中秋の名月」だった。「中秋の名月」とは、太陰太陽暦の8月15日の夜に見える月のことを指し、秋の満月とは限らない。現に昨日は満月ではなかった。
この月という惑星は、地球に大きな惑星が激突し、引き千切られてできた惑星だ。だから月の岩石は基本的に地球と変わりがない。ところが月には生命が存在せず、生命体が作り出す「土壌」がなくて、ただ粉々になった土があるだけだ。地球だけが変わった色をしていて生命豊かな海洋を持つのも生命体のおかげだ。
生命体は地球にあった二酸化炭素を吸収して酸素を作り出し、その莫大な量によって大気にオゾン層を作り出し、生命体に有害な重金属を海底に沈めて安全な場所としていった。今から5億年前に生物は陸上に上がり始め、まだ多かった二酸化炭素を吸収する植物によって吸収して、土壌の微生物と共にその二酸化炭素を土の中に閉じ込めた。樹木よりも土壌の方が五倍も多くの炭素を含んでいる。海洋では二酸化炭素を閉じ込めても、再び生命によって使われてしまうが、土壌は降り積もることによって分解されることがなかった。おかげで大気中の炭素は今のレベルに落ち着き、その上に生命体が繁栄し続けられるようになった。
ところが今、地中に閉じ込められていた炭素を化石燃料として取り出し、それを使うことによって「地球温暖化」の危機を迎えている。
「もうダメかもしれない」という気持ちが強くなる。二酸化炭素を排出しているのが巨大な力を持った大企業で、その利益を手放したくなくて消費することをやめようとしないからだ。しかしいくらそうだとしても、小さな子の姿を見ると何とか生かせるようにしたいと思う。
そんな手立てはないものかと思って地球創生からの歴史を見直した。するとはっきりしてきた。地球の環境というのは生命体が作り出したもので、そこに学ぶしかないのだということが。もちろん二酸化炭素の排出は止めるべきだし、巨大企業の我が物顔の環境破壊は許すべきではない。しかしいかんせん私たちの力は小さくて、利益のための企業活動を止めたくても止められない。少しは対策されつつあるが、その歩みは遅くて、滅亡までの日数に間に合いそうもない。何もできることがないまま、幼い子どもたちの未来を閉ざすしかないのだろうか。
中秋の名月を見上げながら、「月よ、お前のようにはならないぞ」と思うのだが、そのタイムリミットは迫ってくる。
しかしやれることもあるのだ。
化石燃料を使わず、他のものを燃料として生き続けることだ。
そして土壌にもっと多くの炭素を埋設して、大気中の炭素を減らしていくことだ。
たとえば木材を使って、燃料を多消費する鉄やセメントを使わなければ大気中の炭素を減らせる。その貯蔵される炭素量は大きく、それは通常な状態ならほとんど減らない。放射能でよく聞いたのと同じように「半減期」が適用される。半減期は数千年と見られている。日本のような木造家屋なら、建っている間だけ炭素貯蔵される。主な木材がスギなら、50年経つ間に次のスギが成木になる。しかも土壌に閉じ込められる炭素の量はその五倍だ。
水分やミネラルを集めてくれる土壌微生物に与えるからだ。地球が生命体の惑星になったのは、主に微生物と樹木の共生関係のおかげだからだ。
私たち天然住宅は、家を建てると同時に植林や山の手入れもしている。そこで土地に蓄えられる炭素の量は使った木材の量を超えている。そして今、世界の木材の二酸化炭素排出量の基準が変わり、森からの木材は使っても二酸化炭素排出とはカウントされない。
あくまで廃棄された時だが、廃棄されても次の世代の木材に吸収されるので、炭素的には中立で増やしも減りもしないとされる。これは私たちのように植林していれば確かにそうだが、中には伐採して手入れしないところもあるだろう。海外では植林していない例の方が多いほどなのだ。私たちは絶対そんな方向には与しない。
それどころか、私たちと組んでいる宮城県栗駒では新たなエコビレッジも始めた。そこでは化石燃料を使わない。電気も熱も森から出た廃材を利用している。その熱から発電して売電し、各家庭の熱源としている。ここに運んでもらえれば、たとえ建てた後の廃材であったとしても燃料にできる。ただし燃料にできるのは、天然住宅のような無垢の木材を使って建て、合板さえ使わない建物でなければならないが。それにより燃料に化石燃料を使わないだけでなく、廃木材をガス化して熱を取り、そこから出た炭は森の栄養として返していく。
すると二酸化炭素を出さない暮らしを超えて、排出量がマイナスの住宅になる。つまりそれだけ炭素を吸収したことになるのだ。地球温暖化を止められるだけでなく、暮らすことで防ぐことができるのだ。家は確かに高い買い物だ。しかし高いということは、使えば使うほど一年当たりの価格は安くなる。天然住宅は長く使えるように設計している。「住み継ぐ家」、次の世代も使っていけるように設計している。だから家に使う素材が普通の家とは違うのだ。長く使うことでその良さを感じてほしいし、使い終えたならばガス化して熱を取り、炭で土壌を豊かにしたい。
月は小さすぎて水の元素を惑星に保っておくことができなかった。地磁場も強くなくて、宇宙から飛んでくる放射線を避けることができない。そのため生命の誕生には至らなかった。しかし地球には奇跡的に生命体が生まれた。その生命体は進化し、自らがどうやって生まれたかを理解できるまでになった。その生命体の一員として、地球温暖化という未曽有の危機を解決するのか、それとも滅びてしまうのかは大きな違いだ。滅びると言っても生命体全体としては、微生物からやり直すことだろう。進化しすぎた恐竜同様に、ヒトだけが絶滅するのだろう。そうであるとしてもここまで発達できた生命体を滅ぼしてしまうのは惜しい。なんとか解決していきたい。