未来からの警告

今年は元旦から能登半島地震で驚かされた。地震の原因にはいろいろあるが、最も古く認められたのは「プレートテクトニクス理論」だろう。これは、気象学者の「ヴェーゲナー」 が1912 年に『大陸と海洋の起源』という本で主張したが、「大陸が移動する」という仮説が大胆過ぎてあまり真剣に捉えられなかった。

しかし、大西洋を中心に置いた地図で見るとアメリカ大陸とアフリカ大陸はジグソーパズルのように見える。

そこには同じ生物の化石があり、ヴェーゲナー自身も「大陸の移動」を真剣に考えるようになっていった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%86%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%82%B9

第二次世界大戦後、世界の大きな海には「中央海嶺」という海底山脈があり、陸地の地球を分割するように連なっていることがわかった。

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20211019/se1/00m/020/016000c

しかもその近くの鉄鉱石の極の向きは、海嶺にそって帯状に反転した地域が続いていた。鉄鉱石は 585℃以上では磁石としての性質はない。しかし噴出したマグマの熱い磁鉄鉱が585℃以下に冷やされると、磁石としての性質を持って極地を指すようになる。そのことが海底のプレートが割れて大陸が移動したことの証明となった。これをカナダの物理学者「ウィルソン」が1965年に「地面の生成を伴うプレートテクトニクスの理論」として打ち出し、それが今の理論の始まりとなっている。まだ100年も経たない理論なのだ。

プレートに囲まれているせいで地震や火山活動が続く日本にとってはなじみ深いが、まだ高々100年ほどの歴史しかないのだ。地震と言えば「活断層」と思うだろうが、これが真面目に調べられ始めたのは「阪神淡路大震災(1995年)」からで、わずか30年ほどの歴史しかない。

今回の能登半島地震でその活断層が正確でなく、短い断層の多い地域としか思われていなかったのも、原発を推進しようとする勢力のせいだった。断層の長さは地震の大きさとパラレルで、わずか数十キロと見られていた活断層は百キロを超える長さだった。そして巨大地震と隆起と津波を引き起こしていた。

これは日本に住む限り避けられない。プレート境界で大陸プレートの下に海洋プレートが沈み込んでいくため、歪みがたまって地震を起こすからだ。

しかしなぜか南海トラフ(相模トラフ)の線は富士山あたりの線で地上になるため、点線で描かれる。

実はこの点線をそのまま伸ばすと、今回の震源地である能登半島と佐渡島の間を通るのだ。

このプレート境界は線で描けるものではなく、周辺のあちこちで歪む。このフィリピン海プレートは重い質量を持つ「海洋プレート」とされているから、比較的軽い「大陸プレート」の下に沈み込む。

相模トラフ、駿河トラフ、南海トラフと同様に、「北米プレート」や「ユーラシアプレート」といった「大陸プレート」の下に沈み込んでいる。沈み込むところには「海溝」を作り出し、それが崩れるときに地震を起こす。まさに今回の震源域は、その場所だったのだ。

同時に今回の能登半島地震では、「流体地震」であったことも指摘されている。水分が能登半島近くに沈み込み、それが動くことで地震を起こしたと考えられている。

https://www.mbs.jp/news/feature/specialist/article/2024/01/098431.shtml

この耳慣れない「流体地震」は今回初めて言われたようだが、水やマグマ、ガスなどが動くこと地震を起こすことは知られている。このメカニズムも、近年の解明によって明らかになりつつある。

アメリカで珍しい地震が起きているが、その場所がシェールガス試掘による高圧の薬品を含んだ水圧掘削(水圧破砕法(フラッキング))の現場に集中している。これも「流体地震」だろう。

日本でも石炭火力発電所で生み出した二酸化炭素を、温暖化防止のために地中に貯留する方法(「CCS」と呼ぶ)がとられている。そこでは「北海道胆振東部地震」が起き、「流動体」を地下埋設することで地震が起きている。公的には「関係ない」ものとされているが、これも「流体地震」可能性が高いと思う。

【北海道】胆振地方中東部での地震と苫小牧でのCO2地中圧入実験の関係は?(2019/2/21〜2/23)

要は未だに未解明の分野であり、地震のメカニズムを含めてこの百年以内に解明されたばかりのことであると同時にこれから地震が解明される可能性の高いジャンルなのだ。

そんな歴史年代に示されるような長い年代の中で見ていると、日本の火山の大噴火の可能性も高い。久しく起きていないように感じるが、わずか9万年前に阿蘇山で起きた巨大噴火は、九州北部を乗り越えて、瀬戸内海、山口県まで届いた。

9万年前の阿蘇山大噴火 170km先に火砕流跡 最長到達地点にhttps://mainichi.jp/articles/20220316/k00/00m/040/275000c

その範囲では生物がほぼ死滅し、遺跡の文化が途絶え、別な文化に切り替わっている。「核廃棄物の保管期間」は最低でも数十万年と言われる。保管期間より先に巨大噴火が襲うかもしれない。

日本で真っ先に対策を考えなければならないのは、こちらではないかと思う。9万年前に起きた阿蘇山の噴火が起これば、噴火に極めて弱い電力送電線網(グリッド)は崩壊し、溶岩の流出を含めて手の施しようがなくなるだろう。長い年月の中で地震を考えざるを得ないように、私たちの未来を見通すには原発の全面廃止を考えなければならない。

阿蘇山噴火

9万年前の阿蘇火山の爆発で、それ以前に住んでいた人々は、おそらくほぼ全員が滅びたのだろう。それは縄文時代のことだったが、今の社会の方がはるかに危険物だらけだ。しかしそんな中で時代は着々と大破局に向けて時を進めている。

「今だけ、カネだけ、自分だけ」の時代は終わりにしたい。それが原子力を優先する社会を支え、維持させていると思うからだ。「今の時代」だけしか考えない時代はもうおしまいにしよう。今回の能登半島地震では珠洲原発が中止されていて、なおかつ志賀原発も停止中であったことのおかげで、辛くも破局を免れた。しかしそう都合が良いばかりではいかないことは、歴史を見れば明らかだろう。地震対策の準備を怠らないようにするように、原発や核廃棄物の対策をしよう。人が作ったものであるからこそ、人が止めていくことができるはずだ。

これは未来に対しての破滅的な負債なのだ。子どもたちに苦しみを残さないようにするには、私たち世代がきちんと未来を見据えなければならない。もしぼくが日本列島だったら言うだろう。

「警告は与えた、未来をどうするかを決めるのは今生きている人たちだ」と。

(2024年2月川崎市職員労働組合様へ寄稿したものを、好意を得て転載しています)