コスパよし、効率よしの「太陽熱温水器」

田中優宅の太陽熱温水器

太陽熱温水器を導入する理由

家庭のエネルギー消費の中でとにかく消費量が大きいのが電気。次に来るのが温水だ。

だから温水を得るためのエネルギーを減らすことができれば省エネだし、環境負荷も少なくなる。

出典:エネルギー白書2020

よく考えてみると、「温水」といっても使用する時の温度は40℃程度でしか使うことがない。風呂だってお湯が45℃になったら熱くて入れない。実は家庭内で使う温水というのはとても低い温度なのだ。そもそもこんなレベルの温度を作り出すのにエネルギーを消費すること自体がもったいない。

ある友人が、黒く塗ったビニールホースで日向の熱を集め、風呂に流して温水器代わりにしていた。本当はそれくらいシンプルでいい。

しかし、ホースでは長持ちしないしビニールの臭いが移りかねない。可能なら、劣化したり化学物質が溶出しないガラスを使いたい。そんな理由から、私は太陽熱温水器を選ぶ。

温水器選びの基準とは?

太陽熱温水器を選ぶ基準は、まず第一にシンプルで価格が高くないものだ。太陽光発電なら電気を売ることもできるが、温水は売れないし自家消費するのみだ。

その太陽熱温水器には、水を強制的に上にあげて「強制循環」させるものと、水道の圧力のみで屋根上に上げ、水の重さで「自然落下」させるものと二種類ある。強制循環させるためのシステムに費用が掛かるので、自然落下方式を選びたい。

水は安いし、熱の温度は低い。そこにわざわざ金を掛けるのであれば、安い方で十分だ。しかも熱力学的に言えばすべてのエネルギーは熱になって発散されるのだから、さほど「高級なエネルギー」ではないのだ。難しく言えばエントロピーの話になるが、要するに熱は他から集められるからなるべく労力をかけない方がいい。


 
そして熱の伝わり方には三つある。


「対流熱」(エアコンのように風によって熱を伝えるもの)
「伝導熱」(フライパンを熱すると柄まで熱くなる熱)
そして「輻射熱」(光のような電磁波で伝える熱)だ。


この中で圧倒的な熱量があって効率が高いのは「輻射熱だ。だから真空にした筒で日差しを受けて、できれば水蒸気で熱を伝える形のものがいい。下記記事内にあるグラフで見ると、「平板型」のものより「真空管式」の方が1.35倍も効率が良いのだ。

天然住宅では真空管タイプをおすすめしていて、その時々によって使うものは違うが、下記のような製品を提案している。(我が家の品は「寺田鉄工所」の品なのでこれとは異なる)。

http://taiyouko.co.jp/index.html

FUJISOLの自然循環式のものは、本体だけであれば30万円足らずで購入でき、知識があれば自分で組み立てることもできる。そうすれば購入費用も、ほぼ5年程度のガス代で取り戻せるだろう。

諸々部品や施工も含めると、60万円前後で取り付けることができる。
 

温水器導入の注意点

太陽熱温水器を導入する時の注意すべき点は、家のガス湯沸かし器との相性や接続だ。

我が家も太陽熱温水器を使っているが、給湯機につなぐところで水温が高すぎる問題があるため、「スカイブレンダー」というものを設置し、水と混ぜてやや温度を落としてから接続するようにしている。なんだかもったいない気もするが、夏場の太陽熱温水器のお湯は熱くなりすぎる心配があるので必要なのだ。

ノーリツのスカイブレンダー例

年間の温度は図のようになっているので、太陽が照っていればほぼ沸かす必要はない。

もう一つ、問題なのは冬で、冬の真夜中の輻射熱を受けて深夜には氷点下にまで水が冷えてしまう。そのため問題なのは凍結する心配があることだ。「真空管」自体は凍結しないが、給水栓から温水器の上り配管が凍結する可能性がある。寒冷地では保温や凍結防止ヒーターをつける必要がある。

我が家も寒い日の朝には凍結して温水を通す配管がしばらく出なくなることがある。寒冷地ではないので暖かくなれば心配ないのだが、温水パイプが逆に凍結してしばらく使えないことがある。我が家は電気も太陽光で自給しているので、その時にはヒーターの電気がとんでもなく電気を消費するのでハラハラする。

暮らしは冬の凍結を心配する時期以外は、何の変化もない。むしろ我が家は太陽光パネルで電気を自給しているので、電気の不足の方が心配だった。今は太陽光発電パネルを増設したので、それ以降は心配がなくなった。特に太陽熱温水器を使っていて、厳冬期の凍結の心配以外は不便なことはない。
 

温水器の効果は?

実感としては太陽熱温水器を導入してから、ガス代は半分に下がった。今では当たり前になってしまったが、太陽熱温水器のお湯は、何とも温泉のような温かさがある気がする。

お湯を沸かすのには他の方法も色々とあるのだが、
太陽熱温水器は、装置は安いし、効率もよく、不便さもさほどない。

というわけで我が家では電気代は太陽光発電のおかげで負担はないし、井戸のおかげで水道料金もない。ガス代は太陽熱温水器のおかげで半分以下しかかかっていない。

不景気だとか生活苦だとか聞くけれど、我が家には関係ない話だ。次の買い替えの時までには工事費を貯めておかないとなと思うが、機構がシンプルなので故障もしにくい。温水器よりも給湯器が先に交換になるだろう。

天然住宅田中優コラム「持続可能な社会を目指して」より転載しました。

田中優コラム一覧はこちら↓