植林する苗木は今のままでいいんだろうか。素直に疑問に思う。
というのは、スギなどの苗を受け取ってそのまま植林している。もちろん捻じれないように南北だけは確認してから植えているが。
しかしこの写真を見てほしい。とぐろを巻いてしまったいわゆる「とぐろ根」だ。
そこでもう一枚の図を見てほしい。
本来、実から生まれた苗木では、真っ直ぐに地下深くに伸びていく「直根(ちょっこん)」がある。
この根が地下深く刺さってから根を広げ、岩を抱きかかえるようにして地面に強く支えを作る。
ところがポット苗などではポットの中でとぐろを巻いた根が、地面に胡坐をかくように座るだけで根を深く差したりしない。本来は太く伸びる直根は、その場で胡坐をかくようにその場に広がる。おかげで実に安定が悪いのだ。
今、山の地肌を見てみると、地滑りを起こしたようにタテに山肌がはがれてしまっていることが多い。かつてはスギの木は根を深く張らないのかなと思っていたが、全くの勘違いだったのだ。
本来の自然な状態では深く根を張っている。ところがポット苗などでそこに置いていくだけの植え方をするから、もしくは最初から直根を切った苗を植えているから、根を深く張りようがないのだ。
そしてよく植えられる急な斜面に「とぐろ」を巻いていたのでは、少しの荷重で倒される。
「植林」が問題なのではなく、直根を押し込んで丸めてしまったり、邪魔だから切ってしまったりしたせいでこんな事態になったのだ。
三重県の速水林業では、根を残せるように根を縦長にシートでくるんでから植えていた。これも多少は効果があるだろうが、植えるときについ上から力をかけてしまいやすい。根は折れ曲がってとぐろを巻いてしまうだろう。つまり植えるときに細心の注意を払うべきだったのだ。
今年こそ、細心の注意を払って植林したい。毎年出掛けている岐阜の渓谷には、巨大な一枚岩に乗ったスギの木がある。それは浅い苔の上にスギの木が生えているように見える。おそらく岩を穿って根が生えているのだろう。何年経ってもびくともせずに立っている。
真っ直ぐ伸びる根に添え木をして、植林するときに土に刺してはどうだろうか。どうするかはこれからだが、もう山がずる剥けするような姿は見たくない。少なくとも私たちが関わった植林地はきれいなまま残したい。
育った後でその植林地を見たら、美しくて手間をかけたことがわかる森になるだろう。美林を作るには、見ることのできない土の下が大事なのだと思う。
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2020.4.27発行 天然住宅 田中優コラムより
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