ハウスレスじゃなくてホームレス

「ホーム」と「ハウス」

物理的に家がなかった場合、「ハウスレス」だ。家がないこと自体は大変なことだが、「ホームレス」とは意味合いが大きく違う。

ホームレスはほっとして安心できる「家」がないのだ。借家だってハウスは借り物だし、言葉にすれば「ハウスレス」に近くなる。そういう物理的な問題ではなく、自分の安心できる巣がない状態が「ホームレス」なのだ。

でも逆に家が安心できる場所でなかったら、ハウスレスということもある。

安心できるホーム

ある大学の先生が住んだ家でシロアリ除去の薬を撒かれてしまった。業者は何も気にせず念入りにネオニコチノイド農薬の一種である「イミダクロプリド」を散布した。そこから地獄のような日々が始まった。頭痛がして吐き気がして集中力がなくなり、化学物質過敏症の症状を発症するようになった。

今は別な場所に暮らしているそうだ。安くない住宅なのにそれが住む人を蝕んでいく。「ホーム」はその人の存在まで規定する。だからどんな小さくてもいいから安心できる住まいであってほしい。そのための家を届けたい。「ホーム」があることで安心できる。小さな空間の中でも大切にしたい人と住まい、たくさんの体験を経て、育っていく空間にしたい。

シックハウスを選ばない

そう考えると家づくりを「普通」に選択してしまうと失敗する可能性は高い。なぜならほとんどの家が程度の差こそあれ「シックハウス」だからだ。マイホームを持ちたくて建てた家が「シックハウス」であったら、まだ「ハウスレス」の方が逃げられるだけマシかもしれない。

その人たちに聞いてみると、買ったときには「大丈夫です」と言われたという。しかし症状が出るとクレーマーの扱いを受け、対応してもらえなかったりしたという。シックハウスは建て直さないと解決困難だし、被害者本人もその間にもより「過敏症」になっていってしまうからだ。選ぶ時点で気を付けてほしい。

2018年5月発行の天然住宅田中優コラム「持続可能な社会を目指して」より転載しました。

田中優コラム一覧はこちら↓