松枯れにネオニコチノイド農薬散布は無意味だ

松枯れはマツクイムシのせい? 

前号(ネオニコチノイド農薬ふたたび)で紹介した松本市の事例は、松枯れ対策にネオニコチノイドが空中散布されるのに反対する市民の報告からの話だった。

しかし松枯れは本当にマツノザイセンチュウ、それを媒介するマツノマダラカミキリ(併せてマツクイムシと総称する)のせいなのだろうか。

そうなら殺虫剤に効果もあるが、調べてみるとそうでもないのだ。

菌類と共生するマツ 

植物進化樹形

 

同じ針葉樹の中でもマツとスギでは大きく異なる点がある。


 マツは菌根菌と呼ばれるマツタケのような菌類と共生する。その菌が栄養を運んでくれるおかげで、火山灰地のような土すらない栄養のない土地にもマツは生えることができるのだ。その性質のおかげでマツは「パイオニアプラント」と呼ばれる。

 それに対してスギやヒノキ類は菌類と共生していないばかりか、菌根菌による他の植物との情報ネットワークに参加していない。孤高の存在であり、なおかつ菌類に侵されない殺菌能力を持っている。だから幹の中心から腐るような「ウロ」を作らないのだ。

 ではマツのその後はどうなるだろうか。

マツに共生する菌根菌は土地が肥沃になるとその場を他の菌類に譲る。
滅びてしまうのだ。

するとマツは急速に栄養を失って病害に弱くなる。極相林と呼ばれる手つかずの深い森にマツが存在しないのはそのせいなのだ。

虫の役割 

 虫にも存在価値がある。虫は弱った個体を再びやり直させるために、滅ぼすのだ。実際、虫がつく個体は必ず弱った個体で、強い木や植物には虫がつかない。昆虫を探したければ弱って樹液を流しているようなクヌギの木を探せばいい。それは自然界の掟なのかもしれない。


 そのマツに農薬を撒いてもムダなのだ。確かにマツクイムシを退治できるかもしれないがマツは蘇生しない。マツは栄養を運んでくれる菌根菌を失えば、存続できないからだ。そんなマツにネオニコチノイド農薬を撒くのは無意味だ。ただ被害を他の生命体にまで広げることにしかならない。森のためにもマツのためにもならず、ただ農薬メーカーの利益にしかならないのだ。

2017年発行の天然住宅田中優コラム「持続可能な社会を目指して」より転載しました。

田中優コラム一覧はこちら↓