エネルギーの独立を

 ロシアのウクライナ侵攻によって、日本の弱点が強く浮かび上がってきた。それは

日本が輸入に依存していて自ら資源を確保できない国

だということだ。

緩んでいたはずの石油・ガスの価格が高くなってきたことでそれが鮮明になってきている。さらに、輸入資源の問題だけでなく、日本は福島原発事故後10年以上も無策でいたことを白日の下に晒すこととなった。

 
 ドイツなどEU諸国も天然ガスをロシアからの輸入に頼っているので大変なのだが、「福島原発事故」から学び、原発の政策を見直し、原発を止めると同時に自然エネルギーへの移行政策を推進した。今、ロシアからのガス禁輸があったとしても、その先を見通すことができる状態にある。日本よりはるかに寒くてガス依存が強い国なのにも関わらず。


 
 ところが日本は原発と石油依存が強いままで、しかも天然ガスの樺太の「サハリン2(ロシア国営ガス会社・シェル社・日本企業2社の4社が出資する石油・ガス複合開発事業。シェル社は今回の事態を受け撤退)」からの開発輸入に対する依存がとても強い。ロシアのガス禁輸政策は、その文言に「ガスで輸出する場合は」として、液化天然ガスを除いている(サハリンからの天然ガスは液化天然ガスだ)。これでは禁輸政策を本気で実行されると対策も採れない。
 
 どう対策しておくかも考慮されるべきだ。資源価格が高騰する中で、弱みを突かれればできることがなくなってしまう。

 他に選べる政策を確保しておこう。日本は地熱発電が利用できる可能性が世界の中でも極めて高い。しかも海に四方を囲まれた国で、そこには利用できる強い海流も流れている。海上に風車を建てて発電するための海面も広くある(深いので海底からは建てられないが)。


 
 もし電気を家庭向けと産業向けに分けて考えるなら、家庭向けの電気なら各世帯の屋根に太陽光発電を設置すれば、集合住宅でない限り、その広さでほぼ足りる。
 
 それなのに日本は、電力会社の巨大な電力線網に依存し、電力会社の巨大な発電所である原子力発電に依存している。送電も発電も、それ以外の方法のほうが有利になったというのにそのままだ。要は「電気」よりも「利権」を優先しているのだ。


 
 この構図に人々は慣らされて、それしかないと思い込まされている。小さな電気を小さく各地で作り、自給できる地域を独立して作ることも可能な時代に入っているというのに。
 
 エネルギーの独立には、人々の意識の変革が必要だ。政府や大企業の思い通りに動かされない独立した心をもたなくてはならない。今回のような事態を前に、右往左往させられないためにも。

 我が家は太陽光発電だけで独立して10年を超えるが、もはや安定して暮らしていて電気を取り立てて考えることすらなくなった。ついでにカネの多寡に左右されることもほぼなくなった。必要なら購入して、不要なら買わないだけだ。実にシンプルな、他に影響されない暮らしができているのだ。

2022年4月発行の天然住宅田中優コラム「持続可能な社会を目指して」より転載しました。

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