地球温暖化再考
地球温暖化の話は、深刻な未来ばかり聞くのに冬はすごく寒い。寒いと地球温暖化は本当なのかと疑い始める。四季があることで確信が揺らいだりするのが日本の弱点なのかもしれない。しかし世界では着実に温暖化が進行していて、氷でできたグリーンランドの大地が下から溶け始めて、海底に固定されなくなってきているという。グリーンランドがなくなるだけで海水位は七メートル上がる。今すぐではないが、危機が近づいている。
それにはとにかく二酸化炭素の排出量を減らさなくてはならないのだが、一般市民の「ライフスタイル変革」だとか言われて黙らさせるのがいつものパターンだ。
しかし、日本では人々が本当にライフスタイルを変革しても解決できない。二酸化炭素の排出量が多くないからだ。圧倒的に「電力会社や鉄鋼・セメント、運輸」が排出していて、全体の15%ほどの家庭が減らしても効果ないからだ。これが問題のデッドロックになっていて、その先に論が進められなかった。
炭素貯蔵という解決策
でも別な解決策だってある。二酸化炭素の排出量を自分では減らせないのなら、大気中に出てしまっている二酸化炭素を吸収すればいい。
大地の下に貯蔵するのは地震を引き起こす心配があるし、現に貯蔵したところでは地震が起きている。海の中はどうかと調べてみると、すでに飽和に近くなって吸収しなくなり、海はすでに酸性化しつつある。そもそも頼みの綱である光合成は水深百メートルほどの浅瀬でないとできないし、海の生物が死んでしまうと酸素を使って二酸化炭素に分解してしまう。
地球の歴史を調べてみると、海の吸収量はそれほど大きくはなく、圧倒的に炭素を吸収したのは5億年前に上陸した「植物と地中微生物」だった。陸上の生物は死んでも分解される以上に土の中に蓄積したからだ。今でも木の幹となって炭素を蓄積している量より、五倍も多い量を土壌が蓄積している。そう「土壌炭素」こそが、炭素の最大蓄積なのだ。原始の地球の大気は、二酸化炭素ばかりだった。それを減らして酸素を作り、ついでに有害紫外線を通さないオゾン層を作ったのは、「植物と土壌微生物」だった。そのおかげで人間の祖先になる生物たちも上陸し生存することができたのだ。
大気中の二酸化炭素を増やしてしまったのは長年の土地利用と森林破壊、それに加わったのが産業革命以降の化石燃料の消費だった。それを戻すのに、「植物と土壌微生物」を活用しない手はない。二酸化炭素の排出量で見ると「電力会社や鉄鋼・セメント、運輸」業界が原因だ、それなのにその業界に「解決をお願いする」なんて冗談ではない。「泥棒さん、どうか盗まないで」と祈るようなものではないか。
調べてみるとこれが実に簡単で、有機物を不完全燃焼させて「炭」にして、土に加えてやればいい。有害物質を混ぜなければ、その炭は土に混ざって土壌になり、微生物の邪魔をするどころか「微生物たちにマンション」を与える。炭素は長く土壌に残り、燃やさなければ長く定着してくれるのだ。
フランスはパリ議定書の際に「四パーミル(0.4%)イニシアチブ」を打ち出していた。たったそれだけの炭素を農地に戻すだけで、今排出されている世界の二酸化炭素の75%を回収できるからだ。
テラプレタ(黒い土)
しかしどう畑に炭素を撒けばいいのか。ここにアマゾンの例がある。アマゾン川流域には、何度連作しても障害を起こさない「テラプレタ」という黒い土がある。
この不思議な土は何なのかと長年調べられていたが、2004年頃になってやっと判明した。インディオの人たちが数千年前から作ってきた土だった。栄養の乏しいアマゾンの赤い土に、低質の炭を混ぜ込んだものだった。それが土の微生物を豊かにし、奇跡の土を生んでいたのだ。
炭を二酸化炭素の重さに戻すには、約四倍の数字を掛ければいい。わずか一キロの炭が二酸化炭素に直すと四キロ弱の重さになる。家庭一世帯が排出している2019年の二酸化酸素が2.8トンだから、炭に直すと700キロほど。排出量で計算すると、半分に減らせば温暖化させない排出量になるので、400キログラムの炭を作って森に撒けばいい。木々は木質材料になると同時に、土壌微生物にも炭素を与えるので、木材と土壌に炭素を蓄積させる。さらに光合成で空気なら取り込む炭素は、さらに大気から吸い取られる。
それを計算してみると、年に二回森の間伐や植林に出掛けるだけで、家庭の排出分は取り戻せる。もっと簡単に減らすこともできる。家庭の電化製品を省エネ製品に換え、燃費の良いクルマに変えることだ。都会なら公共交通機関を使うといい。そうすれば家庭の責任分はなくすこともできる。
温暖化問題は大企業の二酸化炭素の排出だ。そのせいで私たちは滅びるかどうかの瀬戸際に立たされている。もう大企業を擁護することはやめよう。彼らが問題そのものなのだ。
炭素は炭にすると長くその場に残る。テラプレタは調べてみると北米にも分布していた。その場所こそ豊かとされるアメリカのコーンベルト地帯なのだ。それは今、大規模農業や「ファクトリーファーミング」の畜産によってひどく痛めつけられている。それをやめて土壌を元に戻そう。
日本では、ゴミの多くは焼却処分されている。炭素を含んでいてよく「燃えるゴミ」だからだ。不完全燃焼させれば炭にできる。その炭を山や農地に使えば豊かにできる。有害物質を入れさせなければ。その日本の土壌は、他国に比べて豊かだ。起伏が大きくて耕せる土地が少なく、林業するしかなかったからだ。
森は江戸時代から戦時中まで、収奪されてばかりだった。戦後は逆に植林されたが、1960年からの木材輸入自由化のために安すぎて手入れすらされなかった。今からでも手入れが必要だが、農地のように農薬や化学薬品の過剰使用は逃れられた。農地のように余計な破壊はされずに済んだのだ。この森を活かして環境を再生できるとしたら、これは大きな可能性になるだろう。
山梨県も4パーミルイニシアチブの取り組みを始めました
「4パーミルイニシアチブ」取り組み動画をYouTubeで公開 山梨県
https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2020/10/201008-46958.php
動画
【地球温暖化が危ない!】
「4パーミル・イニシアチブ」って何??
山梨の果樹園が取り組もうとする地球温暖化対策/山梨チャンネル