究極の防災、エネルギー自給

2019年9月発行の無料メルマガより

今年の台風被害  

今年9月9日、台風15号が首都圏を直撃した。中心付近の最大風速は約40メートル、最大瞬間風速は約60メートルで、関東に上陸した台風では過去最強クラスとなったという。それによって交通網は麻痺し、強風でさまざまなものが破壊され、強い雨は浸水被害をもたらした。

特に深刻だったのは房総半島南端の館山などで、風に倒された高圧鉄塔などを完全に復旧させるのに、ひと月近くはかかるだろう。  


しかし交通網が麻痺していることを知っているはずなのに人々は駅に並び、学校や会社に行こうとする。たどり着いたとしても働けるのはわずかな時間だろう。

なんと虚しい作業なのか。仕事の相手先も同じだ。停電に加えて通信がつながりにくい事態なのに。こんな日は休めばいいのにと思う。  


それにしても普段の暮らしを続けるのに、停電していることの影響は極めて大きい。もちろんオール電化住宅にしてしまった人はもちろん、そうでなくとも冷蔵庫の中身は腐ってしまうし、窓も空かないマンションでエアコンも効かなかったら、生命にかかわるほどの暑さだ。

懸念の通り、台風が過ぎると入れ替わるように酷暑が訪れた。もう9月に入ったというのにこの夏一番の暑さを記録したと報道されている。我が家も暑かった。夜になれば涼しくなるのが普通だが、夜になってからも暑かった。  

それでエアコンをつけた。暑くて眠れないのは翌日にこたえるからだ。電気を自給しているから少しだけ心配になるが、明日の天気予報も「快晴」だから、すぐに電気も回復できるだろう。涼しいと気持ちよく眠れる。翌日、予想通りの快晴で電気はどんどん回復していく。

 不便なはずの「電力自給」が便利な暮らしになり、便利なはずの都会暮らしが、自分を閉じ込める檻のようになっていく。

エアコンの新しい形  


それでもエアコンを動かすための電気消費量は大きい。そこに電力自給を進めている自給エネルギーチーム「自エネ組」が、新たな冷房のための仕組みを作った。

京都の「南禅寺修行堂」にも導入した仕組み※だが、岡山の「蔭凉寺」にも導入されている。

南禅寺僧堂輻射冷房装置完成 夏は冷たく、冬は温かく感じる井戸水は1年を通じて一定の温度を保っています。その熱を室内のパネルに巡らし、パネルを冷やすことで部屋を輻射という方法で風のない冷房を行うというものです。  

外気温が高いほど冷房効果が得られます。35℃以上でとても快適になります。 
風がなく、洞窟のような涼しさを感じます。 
パネル表面が結露しますので湿度も多少下がります。 

ポンプの電源だけですのでエアコンに比べ数分の1で済みます。
水質が良ければ通した水を屋根に散水することで、もっと効果的に家を冷やすことが出来ます。 
省エネで単純な仕組みで自然の理に叶った優しい冷房装置です。


自エネ組代表 大塚尚幹さんFacebookより



 

実際に行ってみると風の流れはないにも関わらず涼しくて心地良い。広い面積の大きな壁に装置があり、そこから音もなく涼しさが広がってくる。


実は熱の伝達には三つあり、一つ目は普通のエアコンのような「対流熱」、冷やした空気を循環させて涼しくする。二つ目はフライパンを熱することで把手まで熱くなる「伝導熱」、そして三つ目が冷たいものから出る冷たい熱の「放射(輻射)熱」で涼しくする方法だ。対流は熱を保存できない「空気」で涼しさを伝えるので効率が悪い。


効率よく熱を伝えるには、コンクリートより蓄熱性の高い「」を使って輻射熱を伝えるのがいい。そこでこの冷房装置では、井戸水が一年中ほぼ15℃程度の水温であることを利用して、井戸水を壁に循環させて涼しさを伝える。伝えるのは熱伝導性の高い銅管とアルミのラジエターだ。モノの表面の温度がその熱源になり、そこから放射熱(放射線の熱)が出て他のものに熱を伝える。伝えられたモノの表面からも輻射熱が放射されるので、光の乱反射のように放射熱を伝えていく。  


これにはしっかり法則があって、「シュテファン‐ボルツマンの法則」といって絶対温度の温度差の四乗倍も熱が伝えられる。「四乗倍」なのだから、他の熱伝導とは比較にならないほど効率が高い。だから鍾乳洞に入った時のような涼しさが、風もなく伝わるのだ。  

この熱源に井戸水を使っているから、夏場も冬場も15℃程度の放射熱で快適になるのだ。もちろん夏場は配管に結露が起きる。空気中の湿度を結露させて室内の湿気をわずかながら下げるのだ。これが実に快適で、冷えすぎることもなく暑さを消してくれる。

おカネに頼らないで暮らす  



この輻射熱の冷房装置を入れたい。我が家は井戸だから水には困らない。そうすれば井戸の電動ポンプ以外は電気も消費せずに冷房できる。しかも井戸ポンプは最近省エネのものが発売され、それに変えてからの我が家のポンプの電気消費量は半分近く減った。もしそれをエアコンに変えて普及できれば、電気消費量は劇的に下がるはずだ。  



 しかも我が家のポンプの電源もまた太陽光発電で作り出したものだ。わずか四枚のソーラーパネルの電気をバッテリーにプールして使っているだけで足りるのだ。そんな仕組みだったなら、停電などちっとも怖くない。我が家の子どもは台風と停電のニュースを見ながら「ウチは大丈夫なんだよね」と言っている。確かに導入するときは勇気がいるほどの費用(100万円強)が掛かる。しかしそれで安心して暮らせる上、原発も地球温暖化を起こす発電所も不要になるのだ。  


日本の家庭の電気消費は世界の中でも、ずば抜けて少ない。それなのに遠い発電所から延々と送電線で運んでくる。実際には7割以上の電気を消費する企業の電気消費のついでに家庭に電気を届けているからだ。あの鬱陶しい電柱をなくして、小さな電気消費量なのだから、なるべく自給してしまおう。  


小さな電気消費なら八畳一間ほどの広さ(2キロワットのパネル)で足りる。エアコンが輻射式になればもっとわずかな電気消費で足りるし、冷蔵庫も省エネ型にすれば少しの電気で動く。これで停電の心配がなくなり、以降毎月の電気料金を払わずにすむのだ。  


生活を安定させるには、収入を増やすことではなく、毎月支払わなければならない必要経費を減らすことだと思う。我が家は井戸に太陽光発電、太陽温水器のおかげで毎月の支払いが非常に少なくなっている。年金では足りないという心配もないだろう。


究極的な防災は「自給だと思う。大らかに自分で賄えば、楽しい暮らしができるのだと思う。食べ物は近所の友人たちからの「おすそ分け」でほとんど足りる。するとおカネに頼らない暮らしに近づく。おカネに頼らないで暮らせることが、一番の安心ではないかと思う。

※これこそ自然な冷房の仕組み。大塚尚幹さんらしい本物。
「南禅寺僧堂輻射冷房装置完成」