「水俣病」のメカニズムで「トリチウム」が世界を汚染する

なぜ「トリチウム汚染水」から「トリチウムを含む処理水」になったか

(2018年)現在、「福島第一原発・汚染水タンク撤去後の放射性物質トリチウムを含む処理水の取扱いに関する説明・公聴会」が開催された。そのタイトルは「トリチウム汚染水」ではなく「トリチウムを含む処理水」となったのか。要はトリチウム以外にも取れていない汚染が含まれていたことがばれたからだ。

 特に問題なのは放射性ヨウ素129で、この数は陽子と中性子の合計で、陽子の数が同じ数のものが同じ「ヨウ素」という物質名になるので、ヨウ素129はそれ以外の中性子が76個ということで、ヨウ素131なら中性子の数が78個になる。

 今、福島で甲状腺の集団検査をしているのは、放射性ヨウ素が甲状腺に溜まって甲状腺がんや障害を起こす可能性があるためだ。そのうちこれまで調べてきたヨウ素131は、その半分がキセノンの放射線を出さない安定した物質になる(この半分になる期間を「半減期」という)のに8日だ。だから80日経てば1024分の1に減る。

 ところが今回の福島の汚染水で問題になっているヨウ素129は、半減期が1700万年もかかるのだ。1024分の1に減るまでには1億7000千万年もかかるのだ。考えてもらえばわかる通り、人間の生存から考えたら永遠になくならないことになる。将来の人類や他の生物全部を含めて、「今流していいのかどうか」を問われているのだ。

 ヨウ素は人間を含めて他の動物にとっても必須なもので、しかも自然界には「放射性の」ヨウ素などなかったから生物は気づかずに必死に集める。ヒトなら五か月の胎児期から成長のためにヨウ素を集めるのだ。

 このヨウ素が甲状腺に集められて成長ホルモンを作る。だから甲状腺がんを作ってしまうから、ヨウ素131を気にして甲状腺の集団検診が始まった。甲状腺に対する被害はヨウ素129でも同じだから、これからは世界中で半永久的に検診が必要になってしまう。

 ところがその超問題で超危険なヨウ素129を含めて海に放出しようとしているのだ。「アルプス」という名の浄化装置はトリチウム以外の放射線核種は除去できるということになっていたのだが、ヨウ素129を含めて基準を超える汚染水を二年前から放出をしている。どうやらフィルターの交換頻度を下げたせいらしい。規制委員会は水に希釈すれば問題ないとか言い出し、挙句には「フィルターの交換頻度をあげれば対処できる」などと言って、規制するつもりがない。

 これが世界中にばら撒かれれば、たまたま摂取してしまった人に被害をもたらすことになる。規制委員会とは名ばかりで、「汚染許容委員会」なのだ。トリチウム以外にもそんな危険なの核種も垂れ流すことになったので、「トリチウムを含む処理水」と名が変わった。しかし対策だけが変わりばえがない。ただ希釈して海に垂れ流すのだ。

 これまでもトリチウムの方は、世界中で「除去できないし生物によって濃縮されないから」ということで流していた。しかし1990年頃から研究が進み、「生物濃縮はされないから希釈すれば流しても大丈夫」と言われてきたのがそうではないことがわかってきた。

 「水俣病」で問題だったのは水銀だが、正しく言うと「メチル水銀」という有機化した水銀だった。水銀が有機物と結びついて「メチル水銀」という有機水銀になることで、飛躍的に有害性が高くなって被害をもたらしたのだ。

 実は同じように有機物と結びつくことで、トリチウムも生物が濃縮するようになることが明らかになった。「薄めて流せば大丈夫」と言われていたものが、自然界の生物たちが濃縮することによって有害性が飛躍的に高くなることが明らかになったのだ。

田中優 有料・活動支援版メルマガ より

 そうなると水俣病を経験した私たち日本人ににとってみれば、「トリチウムは自然界で有機化するのだから、流してはいけない」となるはずだった。ところが多くの人々が知らないことをいいことに、これから放流しようとしているのだ。それに対して漁業者団体は理解を示しつつあると報道されたが、公聴会での参考人の人々はみな反対だった。

 世界の生物たち、未来の地球に生きる者たちにとっては、「理解を示す」ことなどできない。人類の歴史より長い期間を過ぎてもヨウ素129は残り続けてしまう。その選択を世界のほんの一部の者だけで決めていいはずがない。

 それに比べるならトリチウムの半減期12.9年など短いものだ。トリチウムを考えるだけなら129年間保存してから放流する方法を考えればいい。その間に放射能は千分の一以下に下がるのだから。そして永遠に残り続けるヨウ素129を考えるなら、きちんと浄化装置のフィルターを使って集めて、絶対に流さないように管理すべきだ。

 このままでは「公聴会」の後には、垂れ流しが決まってしまう。地球上の生きとし生けるものの未来が決まってしまうのだ。従来の政治なら、今の利益の調整だけでいい。しかし少なくとも環境を語るのであれば、遠くに住む人たちや未来に暮らすことになる人々の利益も考えられなければ意味ないだろう。

 確かにただ垂れ流すだけなら対策費は安い。しかしそうして「水俣病」が起こった。それを繰り返すような事態を繰り返すのか。水銀は「メチル水銀」になってはるかに甚大な被害を与えた。トリチウムも同じなのだ。今や私たちはそのことを知ってから判断すべきだろう。私はこんなことの「共犯者」とされてしまうような社会に属していたくない。しかし共犯者にならないためには、社会を変えなければ解決できない。

 「誠実さ」の問題だと思う。今回の処理水には昨年(2017年)から基準を超えるヨウ素129などの汚染物質が含まれている。そのことが報道されたのは今年(2018年)8月19日になってからだ。青森県六ケ所村にある再処理工場の冷却水のつなぎに割れがあり、なんと18年間もチェックされていなかった事がわかった。東海村では再処理工場でプルトニウム汚染事故が発生していたことがわかった。この事態は「アンダーコントロール」どころではない。

 まずはこうした問題のあることを知って、みんなで共有してほしい。
そして多くの人が声を上げるとき、社会は変わり始めるのだろう。
多くの人たちと共に社会を変えていきたい。

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※この原稿は2018.9.25発行田中優無料メルマガより転載したものです

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田中優 有料・活動支援版メルマガ  第168号/2018.8.15 発行

『「水俣病」と同じ仕組みで世界を汚染するトリチウム ~トリチウム放出をさせてはいけない~』

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2021.4.16追

毛細管現象を利用して、安くトリチウムを除去できる技術を開発したとのニュース。
それでもまだ海に放出する?

汚染水からトリチウム水を取り除く技術を開発 東日本大震災の復興支援プロジェクトから生まれた汚染水対策

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