カンナ掛け体験
先日、『ライブアース松山』に出かけ、そこの出店ブースで「小林建工」さんに出会った。手刻みのすばらしい家づくりをしているようだったので、思わず寄らせてもらった。ヒノキの「カンナ掛け体験」が無料で、ぜひやってみたいと思っていたせいもある。
ヒノキにカンナを掛けると、軽く手を乗せているだけなのにスルスルと薄皮が剥ける。その剥いだ木目はまるで綿アメのようにふわふわとしていて、経木をイメージしていたぼくの予想とは違っていた。カンナ掛けした後のヒノキは輝き、反射して周囲の風景が映るほど光っている。…美しい。こんなに木を大事にするのだから良い家になるのは当然だ。
ぼくはイベントでトークをしていたのだが、名乗るのが気恥ずかしいのでそのまま参加者のふりをしていた。でもばれてしまった。そのときに小林建工さんから逆に言われた。「さっき話していた田中さんですか。以前にわが社のホームページをフェイスブックでシェアしていただいてありがとうございました」と。
本物は防カビ剤など使わない
そう言われてみて気づいた。確かに以前にすばらしい「仕口・継ぎ手」の紹介ビデオがあって、これはすごいと思って紹介したことがある。あれが小林建工だったのだ。ぼくが話しかけたもうひとつの理由は、天然住宅の建築に手伝ってもらえないかということだった。小林さんは「申し訳ないですが、予約が三年先まで入っていて、対応できないと思います」という返事だった。
もちろん残念ではあるのだが、それ以上にこんな真面目に建てている会社が、三年先まで予約で一杯になっていること自体がうれしかった。本気で真面目にやっている会社が、多くの人に信頼されている。それ自体が感動的だ。話は木材処理の話に及んだ。
「このヒノキはどうやって乾かしているんですか」
「天然乾燥です。人工乾燥してしまうとせっかくの木の成分が抜けてしまうし、中がぼろぼろになって使いにくいんですよ」
「じゃ、木材自体も防カビ槽に漬けたりはしていないんですね」
「もちろん。原木を市場で買ってきて、そこからはすべて自社処理ですから」
ちょっと説明が必要だろう。
普通に使われている『無垢材』と呼ばれるものは、そもそも原木の時点で防カビ剤のプールに漬けられている。
そうしないとカビが発生してクレームになるからだ。特にカビが出やすいマツやゴムの木は間違いなく防カビ処理される。小林さんが言う。
「無垢という言葉がいい加減なんですね。
防カビ剤で処理したものが、どうして無垢と呼ばれるのか考えられないですよ」。
乾燥方法の問題も大きい。人工乾燥では通常、木材を乾燥させるのに120℃の温度まで上げる。すると木材の「リグニン」の一部が分解して木材の細胞が崩れる。そして木材の持つ豊かな香り成分(これが防虫成分でもある)もまた溶け落ち、乾燥機の床にヘドロ状に流れ落ちるのだ。だから人工乾燥した木材は、内側の強度が落ちて仕口・継ぎ手を刻むと折れてしまうほど粘りがない。シロアリが寄り付かないヒノキの性質も失われてしまう。
小林建工さん
天然住宅は非営利の団体で、こうした本物の家づくりを応援するための組織だ。我々が建てなくてもいい。天然住宅はこうした本物の住宅を安く届けられることをめざし、誰もがどこでも住めるようにするための組織だ。だから我々の手法は、各地域に移転されることをめざしている。
小林さんからフェイスブックに連絡があった。『田中さんに友人申請したかったんですが、やっぱり上限5000人に達してしまっているんですね』と。でもすぐに定員に空きができたので、小林さんを登録させてもらった。本物の技術と本物の家が、人々から信頼されて支持される。こんな素晴らしいことはない。
■「小林建工」のホームページはここにあるのでぜひ見てほしい。
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