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今回は、2012.10.15発行の第25号『 綿花の話 』です。
どうぞ”お試し読み”ください。
※データ、URLなどは、発行時のものです。
オーガニックコットン
先日、友人の出産祝いにオーガニックコットンの製品を贈った。オーガニックコットンは風合いがよく、生産に農薬や枯葉剤を使っていないから安心して贈れる。赤ちゃんではなおのこと気にしないと、というのが連れ合いの意見だった。
半分は合っているんだけど、実際には半分違っている。実際問題として、オーガニックであろうがなかろうが、製品になった時点で農薬は痕跡も見つけられない。実際には洗って染色して発色剤を入れてしまうのだから、なかなか調べはつかないのだ。
でもオーガニックコットンをわざわざ高いのに使うところでは、それにさらに染色で有害物質を使ったり、発色剤で光らせたりはしないだろう。実際、きなりや草木染が多いのはそのためのことだ。だからむしろ安心できる。人々がそれだけ気を使っているから安心なのだ。
だから生産の時点よりも、それを加工する時点の問題のほうが多い。少なくても使用時の健康問題としては。ごく一部、化学物質過敏症の人にオーガニックであるかどうか分かる人がいるが、通常機械では測定できない。
この綿花栽培で滅茶苦茶な環境破壊が起きたのはアラル海だ。アラル海はもともと大きな湖だった。ところが科学万能主義の社会主義ソ連は、そこに巨大な開発して農業生産を上げるために灌漑を行った。そこで生産されたのが綿花だった。
綿花という作物は調べてみると奇妙な性質を持つ。水はけの良い土地で、水をたくさん与えなければならず、水はけが悪いと根腐れするのだ。
つまり砂漠に水を撒け、という作り方がされるのだ。
その結果アラル海は干上がってしまった。水はもはやほとんどなく、砂漠に残された船が点在する荒涼とした場所になった。水が減ったことで塩分濃度が増し、海水に流れ出る前に海水より塩分濃度が高くなった。したがってほぼ魚は全滅した。
http://labaq.com/archives/51268855.html
それだけでなく綿花は莫大な農薬を必要とする。地球上で最も農薬を消費しているのが綿花なのだ。さらに枯葉剤も必要になる。綿花は収穫するときに機械で巻き込んで綿花を取るのだが、十分に枯れていないと葉の葉緑素が混じりこんで汚い色になってしまうからだ。そのため枯葉剤を使って十分に枯らしてから収穫することになる。
これがアラル海では水を失った湖から巻き上がった。巻き上がった農薬入りのホコリは、周囲の子どもたちの肺に入り込んだ。おかげで世界でも有数の子どもが死ぬ地域になっていった。
綿花は貧しさを競い合う作物だ。かつてインド綿、エジプト綿が豊富だったのは賃金が安いから国際競争力があったのだ。それがもっと貧しい中国内陸地に移り、アフリカのサブサハラ地域移っていった。こうして多くの貧しい労働者と児童労働と犠牲になった農薬被害者の上に綿花が届く。風合いが柔らかで、暖かくステキな素材、綿花は、こうして作られているのだ。
アメリカのオーガニックコットン
こうした背景から、安心できない生産ではなく、そして生産者が守られるものとして広がってきたのがオーガニックコットンだった。今では枯葉剤を使わずに手摘みするインドなどのオーガニックコットンと、アメリカのオーガニックコットンが広く使われている。
しかしアメリカのオーガニックコットンには問題がある。アメリカの綿花はどこで作られているのだろうか。綿花は水はけの良い土地で、水を使う。そう、アメリカでは中部に広がるコーンベルトと呼ばれる大とうもろこし畑のある地域で作られる。
しかも巨大水撒き機「センターピボット」で自動で水撒きして作っている。
その水源はどこにあるか。それがオガララ帯水層と呼ばれている、氷河期の氷が溶け出して作られた巨大地底湖の水なのだ。多くは海水のように塩分が高かったりするが、オガララ帯水層は真水だった。この水が使われているのだ。砂漠だから水はけがいいし、そんなところまで害虫も飛んでくることができない。
さらにオーガニックで生産できる理由が、枯葉剤が要らないことだ。砂漠で水撒き機を使っているのだから、その水を止めるだけで植物は枯れる。だから十分に乾燥して機械で収穫できるのだ。
ところがオガララ帯水層の水は補充されない。次回の氷河期の水が溶けるまでは。そのため水位が年々下がり続けている。すると深い井戸に変えなければならず、ポンプアップするための電気料金もかさむ。これを救済するために、アメリカでは補助金をつけて電気代を安くしている。ところが、それでも水位の低下は止まらない。当たり前だ。水が補充されないのだから。
これによってアメリカの大穀物地帯は2020年代には砂漠に戻るだろうと言われている。水位が下がり続けているからだ。そのセンターピボットは、グーグルアースで見ることすらできる。巨大で一本のホースが400メートルから1キロメートルあり、長方形や円形にホースが動いて水を撒く。
アメリカのカンザス州西部などや、サハラ砂漠でもみることができる(サハラ砂漠にも地底湖がある)。このセンターピボットが止まるとき、植物は枯れる。
今はそれでオーガニックコットンを生産できているのだが、いずれは完全に止まる日が来る。日本が輸入しているアメリカからのダンピング輸出されてくる穀物も同じだから、それもいずれ止まる。
そのときにはアメリカにアラル海ができる。ただしアメリカ製は地底湖だったから、表面にはうち捨てられたセンターピボットと農場が残るだけだ。そのためアメリカは、水の豊富なカナダから水を引く計画を考えている。カナダに断られているが、それでもあきらめていない。
オーガニックコットンはフェアトレードで
オーガニックコットンは、正直に言ってしまうと生産地の問題のほうが多い。
消費地である私たちの国では、洗われたコットン自体からはオーガニックであるかどうかを調べることはほとんど不可能だ。
消費地ではむしろ染色や定着液、発色剤などの化学薬品の危険性の方が大きい。
しかしそれでもオーガニックコットンは重要だ。生産者の暮らしに役立つからだ。通常の綿花では生活できない。貧しくぎりぎりで生き、子どもも働かせなければならない。条件は劣悪で、もちろん世界一農薬に被曝する。本当は綿花はすべて無農薬生産にさせたい。ところがオーガニック認定を受けるためには、その土地で農薬を使わなくなってから3年以上経たなければならないことになっている。貧しい農家には無理な相談だ。
その3年以上の期間を生活できるようにするために、「プレオーガニックコットン運動」が展開されている。その主要な運動体のひとつがap bank fes’11、レストランである「クルックキッチン」などなのだ。
生産者に少なくとも人間として生きられる暮らしを届けたかったらオーガニックコットンがいい。さらに考えればプレオーガニックコットン運動にまで関わってほしい。だから本当のことを言うと、ぼくはアメリカのオーガニックコットンはニセモノだと思っている。持続可能な生産ではないし、途上国のように貧しい人たちでもないからだ。
あまりオーガニックコットンの販売者を批判したくなくて、これまであまり言わなかった。しかし本当のことを言うと、アメリカ産オーガニックコットンはダメだと思う。それは本当は、私たちの健康リスクの問題ではない。
そうではなくて、貧しい国の人たちの生活を守るためのものなのだ。
*** 参考サイト ***
▼以下の写真はこちらのサイトより引用致しました。
「らばQ」 http://labaq.com/archives/51268855.html
▼「オーガニック・コットンを買う10の理由」
http://www.go-lands.com/shopping/patagonia_info/cotton/cotton.html
▼ NY Green Fushion
http://www.nygreenfashion.com/html/learn/organiccotton.html
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