すまうとの野木村さん
天然住宅とコラボして家具を作り始めた「すまうと」さんだが、そのきっかけは天然住宅を知ったことにあるそうだ。家でここまで有害化学物質を排除したものが作れているのだから、「家具で不可能なはずがない」と試行錯誤し始めたのだそうだ。
その野木村さんだが、もともと住宅設計の構造計算をしていた人で、建築士だった。おかげで構造計算して家具を作っている。野木村さんに言わせると、家具にはデザイナーと職人はいるが、「エンジニアがいなかったのがおかしい」のだという。おかげですまうとの家具は、シンプルでデザイン的にもすっきりしているのに強い。聞いてみると低温乾燥の木材を使い、仕口・継ぎ手を駆使して組み立てているのだそうだ。だから分解可能で、組み立てた素材自体がなめらかで美しい。
我が家で子どものための絵本棚を買うことにした。しかし普通の家具を置くと、有害化学物質を発するボンドが臭いし、デザイン的にもうれしくない。そこで野木村さんに作ってもらうことにして、直接依頼した。そこから急速に親しくなり、納品に来てもらった際に地域の大真面目な家具屋さんの大森さんを招いて見てもらった。そこから野木村さんの家具を販売するプロジェクトが生まれ、現在進行中なのだ。
野木村さんの外見は、「なんとかジョブズ」氏に似ていて、イタリアに行ったときには「アイパッド」を持たされて写真を撮られたことがあるそうだ。その野木村さんは予想外にとても楽しい人で、しかもデータ好きな点がぼくと同じだった。いつの間にか親しくなって、いろいろ話をした。
家具のフットプリント
前回書いた「エコロジカルフットプリント」の話をしていた時に、野木村さんは即座に「分母の違いですね」と答えてくれた。そうなのだ。大事なのは安物を何度も買い替えてフットプリントを増やすのではなく、逆に長く使うことで「分母を増やす」ことだったのだ。一年しか持たない家具を買ったら一分の一だからその数字通りのフットプリントになる。でも10年持ったら、もし100年だったらと考えてみればわかるように、寿命が長ければそれだけフットプリントは減っていくのだ。
その意味で、家具業界はどうしようもなくダメなものにされた典型だろう。家具屋で思い浮かぶのはどこだろうか。家具屋と言えば安物の量販店ばかりで、「安かろう悪かろう」のものばかりだ。長く使えるホンモノの家具はどこに行ってしまったのか。
末代物
それを復活させたい。我が家で家具を選ぶことになったとき、大変困ったのだ。デザインは良いものがあるかもしれないが、有害化学物質の臭いが台無しにしてしまうからだ。友人が我が家に来た時に、この家にはニセモノは似合わないと言われた。ばれなければニセモノでもよかったが、「臭い」は隠せないのだ。
もし未来を大事に思うのならば、長く使えるものを選んでほしい。かつては「末代物」という言葉があって、自分の世代だけではなく次の世代、その次の世代へと使い継いでいく家具があった。それを復活させたいと思う。
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2017.10発行田中優天然住宅コラムより転載しました
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