家づくりの選択肢

岡山県和気町への移住者

今住んでいる岡山県和気町で、友人が新たに家を建てることになった。その友人が言うのは「優さんの住んでいるような家がいい」という。しかし彼も東京からの移住者で、移住してきた人たちに共通するのは「取るものもとりあえず移住した」という点だ。だからたいした貯金を持っているわけではない。

しかし家を買うのに、どんな住まいでもかまわないわけではない。小さな子供がいるのにシックハウスでは困るし、「安かろう悪かろう」の長く持たない住まいでも困る。彼が「優さんの家のような」というのはそういう意味だろう。

調べてみると、田舎の土地というのは恐ろしく安い。今回買った土地は、町が売りに出した区画で、200坪弱あって価格は300万円以下だ。

そこで計算してみた。ここに家を2000万円程度で建てて、それを「フラット35」で返済したら毎月いくらぐらいになるか。初期の返済額が軽くなる「フラット35S」というのがあって、省エネ性能で天然住宅は基準をクリアしているので、それが使える。

フラット35S

するとなんと現在のアパート代より少し高い負担額で持ち家が買えるのだ。アパートではいつまで払っても自分のものにならないし、老後のアパート代は負担になる。それがアパート代と同額払えば自分のものとなるのだ。

もちろんそれ以外にも費用が掛かる。基準を満たしていることの証明検査の費用や、その他もろもろ。ここを天然住宅バンクからの融資でクリアできるようにしたいと思うのだ。そうすれば多くの人が長持ちする健康な家を取得できるようになる。

でも万が一のことがあったらどうするか。もちろん保険でカバーするが、それに加えて中古住宅の市場を作りたい。

天然住宅バンクの取り組み

天然住宅の場合、「ウェイティング・リスト」を作っている。万が一売却する人がいたら、それを優先的に購入するための「ウェイティング・リスト」だ。

中古住宅の相場を知っているだろうか。普通の家は15年で価値がゼロになり、それ以降は土地を売却しようとしても古い家の取壊し代を差し引かれ、それが家の実質的な価値になる。たった15年で家は無価値になるのだ。

しかし天然住宅は300年持つように建てている。それもゼロにすべきだろうか。そこで中古の天然住宅の物件が出たら優先的に購入する人向けの「ウェイティング・リスト」を作った。予想に反して買いたいと思う人はいる。なにせ数十年経った住宅を見ても、大切な構造部分に痛みはないのだ。

それは社会の資産になる。次の世代は住み継ぐことで、巨額の負担をしなくて済むからだ。それが社会的に広がれば、人々の負担は少なくなる。それを実現したいのだ。

しかし残念ながら地方では必ず売れるとは限らないからこの仕組みを利用するのは難しい。都会でなければ売れる確証が得られないからだ。それでも何とかして購入者を支えられる仕組みにしたい。

そこで今回は、融資に対する保証を出資者にしてもらった。「この人なら確実に返してくれる、その分を私の出資金で保証してもいい」という人たちの保証契約だ。このおかげで融資可能になった。

人々がお互いの力で、移住しても十分に暮らせる暮らしを実現したい。住宅は必須のものなのに、そのせいで不安定な状態になってしまうのはおかしいと思う。天然住宅バンクの力で、その人のせいでない移住を強いられた人々にも可能性を提供したい。そうしたことのできるバンクにしていきたい。

2018年10月発行の天然住宅田中優コラム「持続可能な社会を目指して」より転載しました。

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