「末代物」の思想

末代物


「末代物」とは文字通り、末代まで使う品だ。よく「末代物の家具」などと使う。ところが日本の家具はいつの間にか、すべてが「使い捨て」のものになってしまった。少しでも安く、汚れたり気に入らなくなれば捨てる品になってしまった。使い捨てする日本人が変わらないなら、今の暮らしを続けるには、地球が2個なければ暮らせない。すなわち私たちが暮らし方を変えなければ滅びる状態になってしまった。どうすべきか。

ひとつの地球で暮らすために

まず外国産のものは使わず、国産のものをできれば地産地消するのがいい。海外から日本に輸入するには莫大なエネルギーを必要とする。無理に海外から輸入しなければ、それだけでかなり改善できる。

素材も木材や天然素材を使うのがいい。天然乾燥させた木材はベニヤ板やコンクリートの十分の一しか二酸化炭素を出さない。それは鋼鉄の33分の1、アルミの1200分の1しか二酸化炭素を排出しない。天然住宅の栗駒産の木材では、乾燥は木材カスのバイオマス、電気の燃料も廃食用油のバイオディーゼルなので、実質的に排出量はゼロとなっている。

肉を食べることは、20倍の重さの飼料を消費することと同じになる。それと同様の浪費は、建築材を加工木材にする過程でも起きる。無垢の木材をベニヤや集成材にすると、10倍以上のエネルギーを消費する。だから天然素材をそのまま乾燥させて使った方がいい。しかも接着剤や防腐剤・殺虫剤などの有害化学物質も使わずにすむ。

そしてももう一つ大事なのが、モノを長く使うことだ。リサイクルがよく言われるが、正しくは

「リフューズ(拒否=買わない)、
リユース(再度別な形でもいいから使う)、
リサイクル(素材に戻して再利用する)」


の順だ。

使わないなら受け取らない、
使わなくなったら人に譲るか別な形で使う、
無理ならリサイクルする。

要は余分なエネルギーを使わず、複合素材にしないことだ。

人生最大のごみは家

資源消費で特に大きいのが家屋だ。西欧では数百年使うのが普通だが、日本では30年で建て替えていく。日本では建物の価値がゼロになるのにたった15年しかかからない。人生最大のゴミが家なのだから、日本で普通の家を建てたらその時点で落第になる。

人生最大の消費の家が資源をムダにし、人々を貧しくする。ヨーロッパで数百年使っている建物は普通だ。住み継いだ家の住民は住宅ローンを抱えていない。詳しくは次号で説明するが、天災のある日本でも、条件を満たせば数百年使える建築物を建てられる可能性がある。

天然住宅に住んだ人が意外に困るのがそれまで使っていた家具の扱いだ。化学物質の臭いのしない住まいでは、そうでない家具の臭いが気になってしまうからだ。それなら一つひとつの家具から良いものにしていこう。それが「末代物」という思想だ。

ふたつの無垢家具

家具もそうだ。森を育てるのは50年、100年とかかるから、自分の家具のために木を植える人などいない。誰かが育ててくれた木なら、それにふさわしい家具にしよう。熱くない木のスプーンから家具へ、家具から安全な住まいへと広げることができる。

そこに二つのパターンを用意した。

一つはデザインの優れた家具
もう一つはきこりが作った無骨で頑丈な家具

どちらも化学物質フリーの末代物だ。

末代物だから、可能な限り補修できるようにした。
ぜひ最高の家具を吟味してみてほしい。

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2018年1月発行の天然住宅田中優コラム「持続可能な社会を目指して」より転載しました。

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