太陽光発電で工場を動かせる?
大場さんのところでも、太陽光発電で生み出した電気も使いたい、と考えていた。しかし大きな工場で使うための電気は基本的に200Vで、家庭で使うような大きさではない。
FIT(再生可能エネルギーの固定買取制度)を使えばカネにはなる。確かに黒字にはなるのだが、その後の電気は天候に左右されて不安定だ。直接「くりこまくんえん」で使おうとしたら、いったんバッテリーで整えた電気にしなければ機械を傷めてしまう。そのバッテリーを入れるのはいいのだが、その費用がかさんて黒字にならなくなってしまうのだ。
そのことを知ってみると、FITの問題点が見えてくる。不安定で使えない電気を送電線に流すことで、他人の機器を傷めたり、使えない電気を供給することになる。カネは儲かるのだが、その儲けも市民が電気料金と一緒に負担している料金(再エネ賦課金)から捻出されているのだ。
この構図に気づいてからぼくのやっている「未来バンク」も「天然住宅バンク」も融資をしていない。儲かることはわかっているのだが、この仕組みに融資することができないのだ。
薪の「販売」ではなく
そこで大場さんは薪の販売を始めた。バイオマスだということで、補助金も得られるためだ。ところがその実態がまた問題だった。
薪を利用したボイラーには補助金が出るのだが、その薪自体に規制がない。すると薪を買うにしても、国内の森から出た林地残材(木材の中で、使えないからと放置された木材)ではなく、輸入してしまった方が価格が安いのだ。もしくは化学物質まみれの住宅廃材が使われてしまう。
すると海外の森を買い叩くか、安全でない木材を燃やすことになる。これでは国内の森を活かすことができないし、周囲に汚染物質を撒き散らすことになってしまう。
そこで大場さんはこの仕組みに参加せず、無償で高性能のボイラーを届ける代わり、自分のところで作った薪を買ってもらうようにした。
エネルギー源としての薪の価値
森の木材は建物用の製材だけでは木の体積の三割程度しか使えない。大場さんのところでは一生懸命使っているが、それでも体積の半分を超える程度になる。
そこで廃棄される木くずは粉にして「木質ペレット」にし、山で捨てられる伐根や枝葉なども集めて薪にしている。少し使いやすければ、製紙用のチップにしているし、さらには牧畜の家畜の部屋に敷く藁代わりにしたりして、木材は全部端から端まで使う。だから「くりこまくんえん」に届く木材は捨てるところがないのだ。
その中で薪は大切な資源だ。エネルギーとして利用されるのだから無駄にはならない。
それどころか
戦前まで、日本の木材利用の最大部分は薪などのエネルギー源だった。
それが石炭・石油・ガスなどに入れ替えられて、今の問題を起こしているのだ。
ならばもう一度エネルギー源として使おう。幸いなことに今では高効率なボイラーなども作られているのだから。
2018年9月発行の天然住宅田中優コラム「持続可能な社会を目指して」より転載しました。
田中優コラム一覧はこちら
↓