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第288号:「ap bank」桜井さんたちが自慢する「ホームグラウンド」 https://mypage.mag2.com/ui/view/magazine/163950028?share=1
5年ぶりのapbankfesで感じたことを書きました。
apbank設立時の坂本龍一さんとのエピソードも。
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一部を転載します↓
「ap bank」桜井さんたちが自慢する「ホームグラウンド」
今年は五年ぶりに静岡・つま恋での「ap bank fes 2023」に出かけてきた。ここ数年はコロナの蔓延で休みを余儀なくされていたのが、今年はやっと完全開催できたのだ。「とにかく夏はこうでなくちゃ」と思わせる暑さの中、fesに参加できてとてもうれしい。一番喜んだのは桜井さんと小林さんだろう。
なにがうれしいかって、このfesは桜井さんたちにとって、まさにホームだからだ。ミュージシャンにとって、意外と気にしてしまうのが会場の雰囲気だ。せっかく参加してもらったのにアウェイなムードだったら参加してもらったミュージシャンに申し訳ないし、そんなことなど気にしなくていい状態の中で演奏できたらそれはとても楽しいライブイベントになる。
彼らのことだから、内心自分の演奏の時よりも会場の反応を気にしていたんじゃないかな。だから反応の良いオーディエンスだと、嬉しくなるんだと思う。桜井さんがさかんにこのfesの参加者は「ぼくの誇りだ」みたいなことを言うけど、お世辞じゃなくて心からそう思っているんだと思う。
ミュージシャンにとって「ホームにいること」ってのは大きな安心感なんだと思う。特に想定通り、もしくは想定以上に反応してくれたらホッとするだろう。昔、フォークが流行っていた頃、観客は「帰れ、帰れ」コールをすることがあった。それを受けたミュージシャンは、本当に嫌な気持ちになっただろうと思う。特に自分のファンが集まっているコンサートならいざ知らず、多数のミュージシャンが参加するイベントでは、それを気にするのが当たり前だ。
しかし「ap bank fes」のオーディエンスは、とても好意的だ。アウェイな場所で敵のような人たちに囲まれてする「fes」だったら参加したくもないだろう。
それがよく分かっているから、ミュージシャン仲間には「ap bank fes」の会場で、気持ちよく演奏してほしいのだ。その時安心していられるのが「ap bank fes」の集まってくれるオーディエンスたちなのだ。それは確かに誇っていいことなのかもしれない。
ぼくが最初の年に感心したのがゴミのなさだった。そう思って注意してると、ゴミ箱ではなくリサイクルボックスが各所に置かれていて、そこには羽仁カンタさんたちが主宰する「ごみゼロナビゲーション」のボランティアメンバーたちが分別の仕方から丁寧に教えていた。以来、各地のfesとも、綺麗な状態を維持するようになっていった。 https://fes23.apbank.jp/contents/eco
気づいてみると参加者たちはゴミをポイ捨てしないだけでなく、そこにゴミがあったら自発的に拾ってしまうのだ。だから会場はfesが始まる時よりも終わった後の方がキレイになっているほどなのだ。なんだか会場にはお互いの善意、親切さが満ち溢れているようなのだ。ぼくの世代では、音楽をするのは不良で品行が悪くて、汚くなるのが当たり前のように感じていた。だから善意に満ちたコンサートの状態にとても驚いていたのだ。まさにジェネレーションギャップだった。
しかしそれがさらに磨きがかかっている。そう感じたのは尋常ではない親切さを感じたからだ。ぼく自身が10年近く前に「脳出血」をしてしまい、その後に別に脳出血を再び起こしたせいで、長い時間歩き続けるのが厳しくなってしまった。休み休みならなんとか歩けるが、「ap bank fes」のような長いアプローチ必要な連続した道を歩き続けるのはちょっと厳しいのだ。もともとは歩くのが大好きで、一緒に進む人からは「もう少しゆっくり歩いてもらえませんか」と言われるほどだったのに、今や跡形もない。本当は車椅子で運んでもらいたいほどだが、「そこまでして来るなよ、年寄りが」と言われそうなのが嫌で無理して歩いていた。
一日目は歩けたのに、二日目は続けて歩くのがとても厳しくなった。どうしても流れに乗って歩き続けられなくなって、道端で一休みしないと歩き続けられなくなった。そこで道端に腰掛けると、多くの若者が「大丈夫ですか」と声をかけてくれて救護スタッフを呼んでくれる。「いや、そこまでしてもらわなくても」とは思うのだが、確かに「声を掛けたくなる老人なのだなぁ」とも思う。
そう、ひたすら親切で善意に満ちた場なのだ。そして救護所に運ばれてしまった。「いやー困った状況になった」と思うのだが、休んでからじゃないとスタスタとは歩けない。そこの医療スタッフがこれまた親切で、横にならせてくれて親切に頭を冷やしてくれる。病歴についても聞かれたので正直に答えると、「楽しみなのはわかりますが、無理にfesに参加せずに病院に行きましょう」なんて言う。「いや、家族を呼ぶだけでいいです」と一緒にfesに参加していた妻に救護所に来てもらっていた。
「いや困った、どう逃げようか」と悩み始めたところだった。その時、ぼくなんかよりはるかに症状が重い女性が運ばれてきた。声を上げ、痙攣している。怖いほどだった。早速救急隊と連絡を取っている。そこで救護スタッフから聞こえてきた。「症状の軽い人は外に出てもらって、重い人だけ残そう」と。
このタイミングを逃してはいけない。ぼくは「家族も来てくれたしもう大丈夫です」と言って外に出ることにした。このタイミングだったせいか、誰もまだ引き留めようとはしなかった。靴を履くのも簡単ではないのだが、靴を履いて礼を言うと、そのまま退室させてくれた。
「よく来たね」と唄われると全くその通りだったかもしれない。なんとも情けない状態なのだが。幸いぼくが「ap bank」の監事であることを知る人はいないし、有名人でなくて良かったと思う。・・・