住職の友人
20年以上の友人なので、あまりほめる気にはならないが大河内さんという人は確かに人格者だ。「寿光院」「見樹院」の二つの住職をしていて、ぼくと同じ東京の江戸川区に住んでいた。彼の考え方では、寺というのはもともと地域にある非営利の拠点で、人々に長く引き継がれていくための施設だという。だからお寺は彼自身のモノではなく、檀家を含めた地域の人たちのものである。その住職である彼はその管理者であって、長くその土地を有益に管理していく義務があると考えている。
土地の所有権は宗教法人のままに、社会に有益に役立てるためにと、彼は貸していた土地が手元に戻ると、障害者が暮らすための施設を建てるために貸し出した。しかも長く使えて森を保全できる建物にしたいから、天然住宅で建てたのだ。
見樹院
天然住宅は300年以上使えることを目指している。だからもし、長い百年の「定期借地権」を設定したとしても、契約が満了しても建物は使える。だから建物を解体して原状回復しなくてもいい。解体せずに次の目的に使えるのだ。その考え方で、「見樹院」はお寺ごとマンションにして定期借地権で販売した。周囲のマンションと比べものにならないほど安く。もちろん天然住宅仕様だ。
そこにぼくは大学の授業のある日にお世話になっている。おかげでぼくは、岡山でも東京でも快適な場所で過ごせるのだ。
天然住宅仕様の障害者施設
今回、その天然住宅仕様の障害者施設の見学会をした。入ってみると、とても快適な部屋になっている。
これと比べると、従来の施設は人間の住むところと考えているのかどうかすら疑問を感じてしまう。見学会に来てくれた初老の夫婦は、精神障害のある自分たちの娘が入居するからと見学に来ていた。
そのご夫婦にも安心してもらいたい。周囲にある家よりも格段に安心で、安全な素材を使った頑丈な場所だから、娘さんもきっと喜んでくれるはずだ。親としたら不憫でならないだろうが、安心できる素材で安心できる建物だから、安心して住まわせてあげてほしい。
そんな施設ばかりになったら、娘が親元を離れることになっても安心して出せるようになるだろう。
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2017.11発行 天然住宅田中優コラムより