東電に消された「貞観地震」

2022年の5月末日、札幌地方裁判所は北海道電力に対し、泊原発は津波に対する安全性の基準を満たしていないとして、原発を運転しないよう命じる判決を下した。日本海での津波は巨大な津波になりやすく、逃げるだけの時間すら与えない。運転禁止だけでなく廃炉にすべきだが、廃炉については認めなかった。その曖昧な判断が原発卒業の判断を遅らせる。

日本は世界の面積のわずか0.25%なのに、世界の地震の五分の一を占めている。日本に原発を建てたのがそもそも間違っている。津波にならなくても、揺れだけで核分裂の中性子が不均衡に起きて緊急停止することもある。安全だったら緊急停止などしないはずだ。福島原発事故の大きな要因は、地震による高圧送電鉄塔の倒壊で電気を失ったせいだ。原発は発電しなくても、莫大な電気で核燃料を冷やし続けないと維持できないのだ。

 
津波も脅威だ。海水で冷やし続けなければ、メルトダウンを引き起こすからだ。
しかし福島原発事故での一番の要因は、地震で冷却水を回すポンプに異常が起きたことだった。そのことは今なお隠されたままだ。闇に消されようとしていたのはそれだけではない。

 


昨年10月28日に開示された東電社内での電子メールのやりとりは、事故後10年も隠されていた。東電から提出されたハードディスクから、61通分のメールの復元文書だ。「電子鑑識」といって、削除されたデータの復元などで電子記録を解析し、犯罪の証拠とするものだ。


それによって浮き彫りになったのが「貞観(じょうかん)地震」の話だ。

 


「岡村委員(産業技術総合研究所活断層・地震研究センター長の岡村行信氏)によって、
プレート間地震で貞観地震に関する記述がないのは納得できないとコメントされている」
と東電は関係者にメールする。

東電としては費用の掛かる工事はしたくないと考えていたので、身内で固めている土木学会にモデル検討を行わせたかった。ところが岡村氏はすでに2008年3月から東電の貞観地震の想定が不十分だと厳しく何度も指摘していた。東電はこれを無視することで、東日本大震災に被災して停止させるまで運転を続けた。

 

この「貞観地震」は、西暦で869年に東北・関東北部を襲った地震で、菅原道真らが編纂した「日本三大実録」にも書かれている。これが地震の活動期につながり、9年後に「関東大震災」、その9年後に「南海トラフ地震」が起きている。 (冒頭の画像も参照)

http://ccp86570.jugem.jp/?eid=848

 

 

この貞観地震が東日本大震災とそっくりなのだ。

今すでに東日本大震災から11年、

貞観地震に照らせば、関東大地震は今起きてもおかしくない

 

おそらく同じことを「東京都防災会議地震部会」も考えたのではないか。
同部会は5月25日、首都直下地震などの被害想定を10年ぶりに見直し、「都心南部」「多摩東部」「立川市の活断層」「大正時代の関東大震災と同じ神奈川県」を震源とした場合の四つを示した。


 

東日本大震災は「海洋プレートの大陸プレートへのもぐり込み」による地震で、年に数センチ潜り込むとわかっている。この潜り込みが地殻の歪みをもたらし、あるときに歪みを戻すために揺れを起こす。それに関連して以前に動いたことのある活断層が動く。すると以前の地震と同じ場所が揺れる可能性が高いのだ。

 
このプレート移動による地殻の歪みを戻すための地震の周期は、日本海溝も南海トラフによるものもほぼ数百年ごと、活断層による直下型地震は数千年に一度とわかる。東京周辺の地震も、同じフィリピン海プレート内で起きる「直下型地震」の1つだ。マグニチュード(M)7.3の地震が起きると死者・負傷者約100万人が出るとの報告されている。2011年の「東日本大震災」が「貞観地震」と似ていることは、地形・地質の痕跡からも明らかだ。
 


しかしこれは大震災以前にも予測されていた
上記の岡村氏は、東電の貞観地震の想定が不十分だと厳しく何度も指摘している。

 


東電は隠したメールの中でこう述べている。

「大地震と津波の可能性は「貞観地震」を除いて検討する方向で考え、
津波、地震の関係者にはネゴしていたが、地質の岡村さんからのコメントが出た状況」だと。

「今から対応するとなると設備対策が間に合わない、現在提案されている複数のモデルのうち、最大影響の場合10m級の津波となる」と述ベている。

 

ところが福島第一原発は、5.7mまでの津波にしか対応していない。津波対策では、過去最大の津波に少なくとも2~3割の余裕を上乗せして想定しなければならないから、10m以上の防波堤が必要なのに、このメールでのやりとりを削除し、対策は何もしなかった。それどころか逆に、外部の専門家に根回しし、他の電力会社に圧力を掛け、津波対策の遅れが露見しないよう工作していた。それらのデータを、東電は政府や国会事故調には提出せず、さらに検察の初期の捜査でも利用させなかった。これらは「強制起訴」されなければ、消されたままだった。貞観地震は東電によって消されようとしていた。

 

ところが東北に本社と原発を持つ「東北電力」はこれを検討し、対策していた。それを「電気事業連合会」の代表で、自分の管内に原発を持たない東京電力は無視しただけでなく、東北電力に圧力を掛けている。


2008年11月13日、東京電力の高尾氏は東北電力に、

「本日社内の方針会議を実施し、869年貞観津波については、
バックチェック対象としない方針としました」
とメールを送り、

「東北電力がバックチェックで報告する場合、当社の方針と異なり、
社内上層部まで至急話をあげる必要がありますので、再度御社の方針を
ご確認させていただきたく思います」
とメールしていた。

 


結局、東北電力は東電の圧力に屈し、「貞観津波」を正規の調査対象とせず、「参考」として扱うことにした。しかし対策はしていたので、原発事故にならなかった。
東電の「調査に協力する」という言葉は、真っ赤な嘘だった。もし強制起訴にならなければこれらのメールは永遠に隠されたまま葬られていただろう。

 

不誠実な人や企業を信じることは良くないことだ。歴史に照らし合わせると、これから起こるであろう「関東の大震災」、「東南海(南海トラフ地震)地震」は時間の問題だ。
こんな中で「同調圧力」に流されないことが何より大切だ。

 

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2022.5.30発行 「隠された巨大地震の「前例」、貞観地震(上)」
2022.6.15発行 「隠された巨大地震の「前例」、貞観地震(下) 」

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