切羽詰まった地球温暖化

今年の8月9日、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が『第6次評価報告書』を公表した。その中で重要なのが、「温暖化の原因が人間活動の可能性が高い」と言ってきたのを、「疑いの余地ない」としたことだ。
 

 これを簡単に説明する。まず、惑星の温度は主に太陽からの距離によって決まるが、地球の温度は距離から計算すれば、マイナス18℃の惑星のはずだった。すべてが凍りつき、生命が生きる余地はない。ところがこのマイナス18℃の惑星だったはずの地球には、二酸化炭素(CO2)があった。二酸化炭素は、かつては96%が大気中に含まれていた。生物が陸上に上がり始めた5億年前ぐらいからは0.03%ほど大気中に含まれるようになっている。この二酸化炭素は地球から宇宙に出ていく赤外線を遮断して、少し遅らせてから宇宙空間に放出していた結果、地球全体では15℃に保たれた。
 

 このわずかな遅れのおかげで、地球に届いてきた熱量100%と地球から宇宙に出ていく熱量100%がちょうど吊り合ったのだ。もしこれがわずかでも違っていて、ほんの1%少なく宇宙に出していたら毎年1%ずつ温まり続け、今頃は灼熱の惑星となっていただろう。逆に1%だけ多く熱を宇宙に放出していたら、毎年少しずつ寒冷化し、今頃限りなくマイナス18℃に近くなっていただろう。生物が陸上に上がり始めた5億年前から大気中の二酸化炭素は減り続け、酸素は増え続けた。これ自体、私たちが生存していることと同様、奇跡的なことなのである。
 

 ところが人間は簡単なエネルギー源として化石燃料を使いだした。地中に眠っていたはずの化石状になった炭素の塊だった「石炭、石油、天然ガス」を、エネルギーとして使い続けたのだ。ヒトの科学知識が追いついていなかったら、何の懸念もなく使い果たして滅びることになっていただろう。でもそれより少しだけマシだったから、地球温暖化で滅びることを決定的にしてしまう少し前に気づいた。でもここまでわかっても、対策を十分せずに数百年先の絶滅を決定的なものにしようとしている。この4年が勝負だと言われている。このまま何もしなければ、「疑う余地もなく」温暖化によって滅亡するだろう。

8月14日のニュースでは、北大西洋を起点とする海洋の深海を流れる海流がほとんど止まっているというレポートが出ていた。海流というと表面を流れるものばかり考えがちだが、表面から深海にタテに流れる流れが起き、北大西洋の北部からそのまま南極まで深海を流れる「熱塩循環」が起きている。始まりは北極近くで凍る海が、塩分だけ残して凍るために、そこに塩分濃度の高い海を作った。塩分濃度が高い海水は塩分だけ重くなるので、沈み込む流れが生まれる。この流れがそのまま大西洋を南極まで下る流れを作る。北欧やイギリスが凍るほどの寒さではなく人が住める地域になっているのは、この熱塩循環の始まりに向けて、暖かい南の海の水を北欧地域に引き込んでいるせいだ。
 

 その流れが止まると、その海では海流が止められる。すると北極海への流れが失われて、北極海周辺の海は一層寒くなる。
 

 こうした世界的な異常事態は今後も続くだろう。これを起こしているのが地球温暖化で、最大に効果が大きいのが二酸化炭素の排出だ。排出量を下げる努力は待ったなしだ。日本ではその二酸化炭素の41%を出しているのが「エネルギー転換部門」、化石エネルギーを電気に転換する電力会社だ。まさに電力会社に滅ぼされるか、電力会社を滅ぼすかの選択を迫られている。残念ながら、選択を決めるまでの時間はほとんどなくなった。さて、どうするか。

9月に出版したばかりの新書

そのタイミングで、新たに本を出した。10年少し前に出版した「地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか」の続編となる「地球温暖化/電気の話と、私たちにできること」という本だ。残念ながら10年前の本を出版して以降も回避されないまま、ここまで来てしまった。そこで今回は特にわずか数年に解決できる方法を書いている。

 

 今回の新書の中で主に訴えているのは、前述の電気の話と、土壌への炭素貯蔵の話だ。電気の話はこの天然住宅コラムに何度も書いている通り、地域分散型で地域自給していく方向性だから細かくは触れず、天然住宅でやっている植林ツアーの定量的評価をここで書いてみよう。

まずは地球に植林することの大事さだが、地球の大気は46億年前の姿では酸素はなく、大気の96%が二酸化炭素に覆われていた。酸素は反応性が高く、あったとしても反応してすぐに失われるからだ。

 地球に酸素が生まれたのは、シアノバクテリアが発生して、光合成を行うようになってからだ。それは海の浅い部分に発達したサンゴ礁状の「ストロマトライト」と共生していたもので、化石歴史から37.7億年前〜39.5億年前の地層の岩石中の微化石がそうではないかとされている。

ストロマトライト

 しかし、それによって直ちに今のような「78%が窒素、21%が酸素、そしてわずか0.03%が二酸化炭素」の大気組成が作られるわけではない。それには生物の働きを待たなければならない。生物が大気の組成を変化させる前の大気を「原始大気」と呼ぶが、その96%が二酸化炭素によって占められていた。この二酸化炭素を吸収して酸素を大気中に供給しなければ、大気は今のようにならなかった。その最大の貢献をしたのがシアノバクテリアだ。
 

 ストロマトライトと共生したシアノバクテリアは、海の浅瀬で増殖する。だから、残念ながら平均水深4000mの海のほとんどには生存できる場をもたず、しかも海中に在るために、寿命が尽きると再度海の中で分解され、作り出した酸素分は海中の養分となって反応してしまう。しかし、その反応は海に大きな変化をもたらした。原始の海洋にはたくさんの鉄分が溶け出していた。酸素は、その鉄分(有害な重金属)と反応して、それらを酸化させ、深海に蓄積させたのだ。そのおかげで海中は中和されていき、生物が生きられる海になっていった。
 

 しかし大気中に酸素が激増したのは植物が上陸し、生み出した酸素が海水に反応して失われるのではなく、大地の土壌に蓄積されるようになった約5億年前からだ。最初に上陸したのは浅い海に生える藻や苔に似た緑藻類と呼ばれる植物だ。これらが後に針葉樹類や単子葉類に進化し、陸上を一面の緑の大地にしていった。

 この植物の上陸によって大きく変わったのが大気の組成だった。大気から捕らえられた二酸化炭素は土壌へと蓄積され、それまで海中に流出していた分も土壌は逃さなかった。そのために、大気中の炭素はそれ以前とは桁違いに減ることになった。
 

 それは地球の大気温をも変えた。二酸化炭素が多くて温暖化していた大気は、著しく冷やされることになった。それが5億年前、植物の上陸によって進んだのだ。と同時に大気に溢れた酸素は、上空で紫外線と反応してオゾンになった。それが有害紫外線の侵入を妨げたため、動物たちの陸上進出を促した。

植物の陸上進出を再び起こそう

 この桁外れの炭素吸収を起こしたのは植物と土壌微生物の進出だった。今地球温暖化を起こしてしまっているのは、言葉を変えて言うなら「植物の光合成による炭素固定量と人間が地中から掘り返す炭素燃料のバランス」を欠いたことだ。
 

 このバランスを再び取り戻そう。一次的にはより多くの炭素を陸地に貯蔵する必要がある。その危機的な時期を越えたならば、炭素を放出しない暮らしによって、「植物の光合成による炭素固定量と人間が地中から掘り返す炭素量」とをバランスさせよう。そのために必要なのは、植物による炭素固定の力を取り戻すことだ。

 だから緑を増やそう。言うまでもなく、森を燃やしてはいけないし、生育を妨げてはいけない。菌根菌と呼ばれる植物の根に共生する菌と、緑を育てることが大切だ。ここで天然住宅がしている 植林活動とつながるのだ。
 

 そこで森の育林の手間を定量化してみよう。目指すべき目標は現在の二酸化炭素排出量を45%減らすことだ。それは炭素換算(二酸化炭素換算ではないので注意)で、各家庭550kgになる。もし火力発電所などの「エネルギー転換部門」をなくせれば、 日本の二酸化炭素排出量の40.1%をなくせる。しかしそれでもまだそのバランスを安定させられる45%まで減らすのには届かない。残りの部分を菌根菌と植物の共生関係に託したいのだ。
 

 比較的早く育つスギを例にとると、1ヘクタールの広さ(100m×100m)に植えたスギを約50年間育てると、82トンの炭素を吸収した木材になる。天然住宅で行っている植林ツアーでは、約20人で植林・補植(植林木を補充する)をし、間伐・除伐(育つのに邪魔になる枝を切ったり、生育の妨げになる「つる植物」を切る)を行って帰ってくる。それぞれの手間にかかる部分は以下の図のように推定されている。

スギの育林費用の内訳

 これを毎年実施しに行っているのだが、毎年新たに植林しているので、翌年には前年以前に植えた木が吸収してくれた炭素が加算される。下草刈りはウシやウマがしてくれているので、(動物のケアには手間がかかるが)山仕事の中で最大の手間である下草刈りをしてくれている。

 また間伐は春と秋の二回に分けて行っている。春には先ほどの植林に加えて、「皮むき」をして、冬にその木を倒伐している。

皮むき間伐

加えて毎年出掛けているエコラの森では、林野庁の推進するような皆伐(一面の木を全部伐ってしまうこと)はせず、必要な木だけを伐り(択伐という)、補植し、広葉樹を残しながら緑を育てているので、より優れている。しかも森には重い重機を入れず、2.5mの細い林道作業道にしているので山は崩れない。山に入れるトラックやフォワーダーの燃料も、廃食用油から作ったバイオ燃料なので二酸化炭素カウントはゼロだ。
 

 さらに2020年からは枝葉も燃やせるCHP(熱源供給システム)を導入し、残すところなく木材を活用して電気と熱を作っている。これをエコビレッジの熱源とし、電気は地元の電力会社「かみでん」に売っている。しかもガス化して燃やした後には炭(文字通り炭素だ)が残り、これもまた山な撒くことで木々を支えている菌根菌の住まいにしている。
 

 実は森の土壌には木材の5倍の炭素が残されている。これは、植物が菌根菌と共生した結果作られたものだが、この量は今のところ毎年の増加量(二酸化炭素を炭素として土壌中に貯蔵した量)は定量化されていないので、炭素吸収量としてはカウントに入れていない。おそらくその分を入れるともっと大きくなるのだが、それを入れなかったとしても森の作業で得られる炭素貯蔵量は以下の図のようになる。

 年に2回、1回目は「植林と皮むき」、2回目は「伐採と薪割り」に精を出せば、これだけの炭素を吸収できるのだ。 11年目には達成すべき家庭の排出量、炭素換算で550kg超える。その量はほとんど植林した木の成長による炭素吸収だから、あとはそのままでも達成できている。もちろんその後も続けていれば、その分だけ炭素を吸収できる。
 

 前述のようにこの計算は木材の炭素蓄積量だが、それ以外に土壌の炭素貯蔵量もほぼ同じだけある。しかしそれはまだ定量化されていないから計上していないだけだ。それに木材を使って電気と熱を作った後の炭の分もある。蓄積される炭素量はもっと大きくなるはずだ。これが私たちのしている植林ツアーに参加した場合の効果だ。ぜひ一緒に参加してみてほしい。難しい話はさておき、何も考えずに森の中で作業していることは、何とも豊かな気持ちになれる。

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田中優天然住宅コラムより転載しました

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