「生命の体系」に倣った解決策を

「バクテリゼーション」なる言葉がある。その「バクテリゼーション」 とは、「微生物培養物を作物成長または生育部位に接種すること」を意味するそうだ。何のことかと言えば、作物の病害に対して、微生物の培養物を接種したり欠けている要素を補充したりして、病害から回復させ、作物を元気にする微生物(バクテリア)を与えることだ。それを接種することで、たまには多大な作物の増収をもたらすこともある。

しかし「バクテリゼーション」は、

(1)それに効くかどうかの特異性が高くて絶対ではないし、
(2)変異しやすくてこれが効いたと特定しにくく、
(3)効果が弱い。

さらに
(4)条件によって効果が大きく変わり、
(5)持続性に乏しい

などの欠点がある。

これらの欠点をカバーするために、他の益虫と組み合わせたり栄養素を組み合わせる「生物防除法」を足したり、他の農業技術と組み合わせる必要があると書かれている。

要はどういう時にどんな組み合わせでどれくらい効くか、何が効いたのかわからないのだ。なんとなく人々の期待する「ワクチン」に似ている。接種したから確実ではないし、何が良かったのかわからない。でも「バクテリゼーション」はワクチンよりは有害な可能性が少なく、多少は効くだろうからよほどマシだ。これが効果を上げるのは、それらの微生物が植物自体の根などと「双利共生」して、害になる細菌やウイルスを駆除したり栄養素を届けたりするからだ。

エンドファイト(「植物内生菌」を活用する)

 

でも何でそんなに期待されないのか。それは「ビタミン」みたいなものだからだ。即効性はないし、効いたかどうかもわからない。何だか「おまじない」みたいだからだ。

 でもぼくはこの方向に解決策があると感じている。「これはいいよ」と勧められた健康食品を食べてもすぐに体調が良くなったりしないし、変わったことさえ気付かない。そういうものだと思うのだ。

 私たちの体の中には30兆もの細胞があり、さらにその10倍ぐらいの微生物が棲みついている。その中の一部のバクテリアを足しても効果はすぐには出ないだろう。こうした機能はたいてい、ブレーキとアクセルの機能がセットで成り立っている。丁度良い状態というのは、ブレーキとアクセルが程好く調整されている状態なのだ。そう、アドレナリン(興奮・活性化させるホルモン)とノルアドレナリン(沈静化させるホルモン)の役割みたいなものだ。さらにもっと複雑な関係から効果を及ぼすものもあるから、これだからこうなるというような直線的な反応にはならないのだ。だけど仕組みとしてはアクセルとブレーキ、その混合が状態を決めている。

たぶん体の仕組みは両方がセットで機能するように作られている。だからアクセルに良いものだけでは機能せず、ブレーキを弱めにすることで機能するのだ。それと同じでバクテリゼーションだけでは機能しない。他の何かと一緒にならないと効果が出ないのだ。そのおかげで体は暴走しにくい。一気に冷たくなったり熱くなったりしにくいのだ。

この仕組みは人の「免疫機能」でも見られるし、そういうものなんだろうと思う。しかしその効果は確実にあるだろう。(つづく)

 


こちらよりの田中優天然住宅コラムシリーズより転載