天災に耐えられる住まいの条件

天災の確率

以前のコラム(第101回『「末代物」の思想』)で

「天災のある日本でも、条件を満たせば
数百年使える建築物を建てられる可能性がある」


と述べた。

本当にそうなのかと疑問を持つだろう。

もちろん確率の問題だから、隕石が落ちてきて家が壊れることだってあるし、突然の噴火で噴石流に流されてしまうことだってある。なにせかつて起きた九州南部のカルデラ噴火では、北海道にまで噴煙が届いているのだ。どこにいたとしても助かるかどうかは確率の問題で、どんな建物を建てても絶対に大丈夫ということはない。広い範囲の被害が多く、火災の延焼以外は面的な被害になる。

大丈夫かどうかは天災の側の確率にかかっている。

天災の側の確率を調べて、その場所を選択することが大丈夫な住まいの作り方になる。

地震

まずは重要な地震について考えてみよう。

地震には二つの形がある。
阪神淡路大震災のような活断層地震と、東日本大震災のような海溝型地震だ。

陸上の活断層性地震には起こる地域があり、被害も偏在する。道の反対側は建物被害がほとんどないこともある。頻度もせいぜい千年に一度あるかどうかだ。

一方のプレート型の海溝型地震は百年から数百年に一度起きる。そして津波を併発することもあるが、その津波の届く範囲は限られている。だから地震被害の及ぶ範囲を避けることが重要になる。幸い、国内の活断層の分布はかなり確認されている。国内で大震災にも大丈夫と言える建物を建てるには、予測される震災と津波の届く範囲を避けて建てるのが一番良い。もし震災・津波の範囲に建てるなら、場所と地盤から考えて大丈夫と考えられる範囲に、予想される震度に耐えられる耐震性を持つ建物を建てればいい。

しかし残念ながらプレート理論に基づく海溝型地震は1960年頃から解明されたもので、活断層地震は1980年代から、特に1995年の阪神淡路大震災以降に調べられたものが多い。従って未だに解明されない活断層の存在は否定できない。その震度に耐え得る建物を建てるのがいい。

岡山と天災

台風の進路も予想外なものは多くはないし、予想外の範囲だとしても台風に耐え得る建物は建築可能だ。台風にエネルギーを与える高温の海沿いになるのだから、そうした海域を避けることが重要だろう。たとえば瀬戸内海地域は、東西に高い山脈があるので降水量はすでに山脈で落ち、大雨にはなりにくい。豪雨は湿った風が当たる山の麓に集中しやすく、瀬戸内は南北の山脈ですでに落ちているからだ。

もっと局地的には雨水が集まる谷筋は避けた方がいい。地質学的に脆い地質のあるところでは土石流を発生させる可能性がある。天災は範囲があり、その範囲を避けることが何より重要になるのだ。

ぼくの住んでいる岡山は瀬戸内で台風も少なく、活断層の数も少なく、瀬戸内の内湾なので津波もほとんど届く心配がない。こんな土地に強固すぎる建物を建てるのはオーバースペックになるだろう。

土地は近くに「学校や病院があるかどうか」以前に、天災の確率の低い場所を選んだ方がいい。


局地的には地盤が固く、元水田のような湿気の多い場所は避けた方がいい

地名には土地の名残の名がつけられていることが多いので、地名にも注意が必要だ。そこにオーバースペックにならない程度の建物を建てるのがいいだろう。

2018年5月発行の天然住宅田中優コラム「持続可能な社会を目指して」より転載しました。

田中優コラム一覧はこちら↓

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参考に  「あなたの街の揺れやすさは?」