それなら炭素を貯蔵しよう

前出のように大企業による二酸化炭素排出量は大きく、それに対する批判的視点と姿勢は持ち続けるべきだが、その上で、私たちの暮らしの中でできることはしておきたい。そう考えると、なるべく「炭素を貯蔵しよう」ということになる。

 

面白いことに木造で家を建てた場合と、鉄とコンクリートで鉄筋コンクリート造りの建物を建てた場合とでは、二酸化炭素の排出量は4.2倍違う木造で建てることは、二酸化炭素排出量がはるかに少ないのだ。

 

さらに今では木材の二酸化炭素排出量の計算方法が変更されている。「伐採木材製品(HWP)」の扱いだ。これまで、伐採された木材は搬出された時点で大気中に排出されたものとしてカウントされていたが、それが「木材製品」として使われれば、大気中に排出されたものとしなくていい。その後に廃棄されるまでは二酸化炭素を貯蔵したものとして扱われるからだ。

 
実際に炭素が固定される「伐採木材製品(HWP)」が、森林の適正な管理に見合った「炭素分の貯蔵」として扱われることになっていたのだ。
詳しくは>>田中優コラム#161 「地球温暖化防止のルールが変わっていた」

 

ということは、天然住宅で木造住宅を建てたり、「すまうと」の家具を買って家に置いたりすると「伐採木材製品(HWP)」として排出量ゼロと扱われるのだ。家も家にある家具も炭素を貯蔵しているので排出していない扱いなのだ。

 
こうなると「鉄筋コンクリート造」の何倍になるという計算も意味をなくす。なぜなら天然住宅の木造はゼロなのだから、何倍したってゼロなのだ。とはいえ建てるときの重機や作業手間、木材の運搬のための二酸化炭素は排出されている。その分を含めても極めて少ない量になるが。

ここまでは他の木造住宅と変わらないが、天然住宅ではその後が変わる。天然住宅は木材を防腐処理もしなければ、高温乾燥もしないし殺菌処理もしない。あくまで天然の木材の素晴らしい性質(例えばダニに対する殺菌効果や曲がりに対するしなやかな粘り、木材が本来持っているフィトンチッドなど)をそのまま活かしている。

だから解体した後になっても、その木材を燃やしても有害成分が出ることもない。そうすると木質ペレットにしても薪にしても、伐採してきたばかりの木材と変わりがないのだ。

木質ペレットは、間伐材や端材を粉々にして圧縮したもの

ということは燃料として木材を使ったとしたら、その分だけ二酸化炭素は化石燃料の消費を減らしたことになる。つまり「排出ゼロ」に留まらず、排出量がマイナスとなるのだ。つまり他の二酸化炭素の排出量を減らせることになる。

すると結果として、天然住宅に住む場合にはアパートやマンションに住むよりもはるかに二酸化炭素排出量が少ない。いや、「伐採木材製品」の分をカウントに入れるなら、地球温暖化対策として「建てて住んだ」方が地球温暖化対策になるほどなのだ。

「そんな馬鹿な」と思うほどの結果になる。それは地球の成り立ちに沿っていて、地球の酸素形成に役立つことになるからだ。大手を振って住まいを建てよう。


こちらより転載 田中優天然住宅コラム